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チベットの旗

旅行記:チベット(世界自然旅)

50.遭難未遂 (2004/11/4:晴

 朝から内院コルラ

Gyengtak Monastery
ギャンダ・ゴンパ

 昨日コルラを終えたことで、他の人たちはカイラスを見尽くした感がみなぎっていたが、私は内院コルラも歩きたいと思っていた(本当は巡礼路を12回コルラをしないといけないらしい…)。ガイドは10時に出発するというが、それではコルラ達成が困難なので、11時出発に変更してもらい、夜明け前、水と軽食だけ持って、1人で出立した。

 まだ暗い中を登り始めるが、いきなりの急登に、昨日の疲れも重なって苦戦。やっと最初の登りをこなすと、朝日が昇ってきて、一気に見通しが良くなった。そして、ここからはしばらく緩やかな道が続くので、のんびりと歩いていった。

 分岐を左に見送り、ギャンダ・ゴンパ(江扎寺)を目指して再び登り出すと、ほどなくして寺のラカンが望めるようになる。1時間ほどで寺の前に来ると、犬が吼えて怖かったが、まもなく僧侶が登場。この先の道がよくわからないので、「カン・リンポチェ?」と前方を指で指すと、そうだと頷いている。きっとその方向なのだろうと思い、怪しげな踏み跡をたどって峠に向かった。

 急な斜面を這うように登るが、踏み跡はすぐになくなってしまった。嫌な予感がしたものの、このまま登ればカイラスの南面が見えるのは間違いないので、とりあえずは展望地まで歩こうと、道なき道を進んでいく。足跡が見当たらない上、5000mを優に越える登りで足が進まないが、気力を振り絞って登っていくと、ついに神の頂きが再び姿を現した。3日前、尾根から見たのとは比べ物にならないほど近く、格別の迫力だ。カイラスは北壁が圧巻だが、南面も悪くないと、改めて思い知らされた。

South face of Kailash
カイラス南面が迫る

 下は氷と崖

 ここでしばらく腰を落ち着け、じっくりと南面を眺めたら、あまり時間の余裕がないので、向かいのセルン・ゴンパ(色龍寺)に下っていく。このまま行けば良いのかと思い、斜面を降りていくと、突然、すぐ下が崖になっているのが見えた。まずい、ここは下れない!

 しかし、この辺りは完全に雪と氷に閉ざされていて、引き返すのは容易ではない。一歩でも足を滑らせれば、間違いなく崖下に落ちて遭難してしまう。カイラスで死ねれば本望…なんて冗談を言う余裕はない。慎重に、慎重に登り始めた。

 が、アイスバーンを這うように上がるのは困難で、本当に怖い…ちょっとバランスを崩しただけでも、持参していたクッキーは崖下に転落してしまった。自分もああなってしまうのだろうか…不安や恐怖と闘いながら、脱出口を探した。

 このまま登るのはあまりに危険なので、いったん岩の上に出て周囲を見渡すが、ここはもう少し登って迂回するしかないようだ。改めて氷を慎重に通過し、ようやく柔らかい雪の上に出ると、一踏ん張りで斜面から脱することができ、九死に一生を得た。

Kailash pray
崖淵から脱出し、神に感謝

 この時点でもう10時半を周っていたので、一息ついたのもつかの間、急いで下りにかかる。幸い、ここからは急ながらも下まで歩けるようになっているので、そのまま駆けるように下って、ようやくセルン・チュ(色龍曲)の川原に降りることができた。これでもう遭難することはないが、一時は極限状態に追い詰められ、この時にはもう、体力も気力も尽きそうであった。

 でも、私を待っているメンバーがいると思い、わずかな力を振り絞って下り始める。巨大なカイラス南面に別れを告げて、川原に沿って進むが、既に飲料水は凍っていて飲むことができない。もうほとんど脱力状態で、ふらふらと歩いていった。

 そして、集合時間より1時間ほど遅れて、ようやくダルチェンが眼下に見えるようになった。皆が心配そうに見ているが、もう走ることなどできない。それでも、やっとのこと宿の前にたどり着き、ホッとしたら力が抜けて、その場に倒れこんでしまった。慌てて水を用意してくれたが、本当に精も魂も尽きた気分であった。

 聖湖の眺め

 しばらくして落ち着いたら、一路マナサロワール湖に向けて走り始める。バルガの手前から轍に入り、斜面を上がっていくと、背後にカイラス山がまたも現れ、美しい山容を見せてくれている。そして、峠に登れば前方にマナサロワール湖とナムナニの姿が見えてきた。どちらも素晴らしい眺めだ。

View of Mt Kailash
カイラス山全景を振り返り見る

 ここでカイラスに別れを告げたら、今度は湖に向けて下っていく。湖岸まで来ると、美しい湖も部分的に凍っているのに気づくが、車はそのまま走ってチゥ・ゴンパ(即鳥寺) を周り込み、温泉のある集落に到着。ここの無名の宿に陣を取った。

 そして、ここで久々に温泉に入れる!と思ったら、ちょうど管理人が出かけていて、明日にならないと入れないらしい…かなり残念だが、こればかりは仕方がない。

Chiu Gompa
チゥ・ゴンパ

 そこで、その後は自由時間となり、寺巡りなどを勧められたが、個人的にはマナサロワール湖の美しい景色を写真に収めたいと思っていた。しかし、寺からではアングルが今ひとつで、どうせならナムナニと一緒に撮りたい…ならば向かいの丘まで歩く必要があるので、疲れ切った体に鞭打って歩き始めた。

View from Chiu Gompa
チゥ・ゴンパからのマナサロワール湖

 丘までの道は大したことないが、風景が雄大すぎるため、近いようでなかなかたどり着けない。それでも、やっとのこと丘の中腹にやって来ると、そこからはナムナニとマナサロワール湖が一望のもととなり、期待以上の景観が広がっていた。他の人たちはもう興味を示さず、周囲には誰もいない。贅沢にもこの絶景を独り占めし、心ゆくまで眺めることができた。

Lake Manasarovar
マナサロワール湖とナムナニ

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