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旅行記:北欧(世界自然旅)

26.まさかのビバーク (2004/5/25:曇一時雨

 淡々と森歩き

 朝、今度こそ晴天を期待したが、あいにくの曇り空で、しかも食事をしていたらまた雨が降り出してきた。フィンランドに入ってもう8日目だが、毎日雨が降っている…さすがにこれほど降るとは、予想だにしていなかった。

 しばらく小屋で待機し、雨がほぼ止んだところ(9時頃)で出発。昨日同様、淡々と森の中を歩いていく。それほど起伏がないので楽々キャンプ場を通過し、さらに先へ進むと、不意に右側が開けてきた。それにつられて淵まで行ってみると、眼下には蛇行するオウランカ川(Oulankajoki)が見えた。辺りは鬱蒼とした森で、景観は悪くない。ここで少々休んでいくことにした。

Oulankajoki
オウランカ川

 復帰後も相変わらずの森歩きだが、いったん急なアップダウンをこなしていくと、再び川岸の展望が広がり、その先には狼煙が見える。位置的には、あの辺りに小屋があるらしいので、誰かいるのだろう。しかし、トレイルは小屋を経由しないので、狼煙の主には会わぬまま通過していった。

 道は楽々で、快適に進むことができる。右手には眼下に森と川、ところどころ池や湖が広がっているが、木々が邪魔して良く見えないのが惜しい。それにしても、ここまで10km以上歩いているが、すれ違ったのは3人組のみ。やはりシーズンオフで、日帰りはともかく、縦走している人は相当少ないようであった。

View of Oulankajoki
オウランカ川を見ながら進む

 混雑地帯を越えて

 やがて、前方から轟音とともに滝らしきものが見えてきた。あれが有名なキウタコンガス(Kiutaköngäs)のようだ。喜び勇んで近づいていくと、とたんに人の数が多くなった。それもそのはず、ここはオウランカの中心地で、近くまで車でアクセスでき、ビジターセンターまである。先ほどまでの静寂が嘘のような喧騒となったが、幸い、私が滝に近づいた時に小学校の団体が去っていったので、しばしの静けさが取り戻された。

 そこで、さっそく滝の間近まで近づいてみる。この滝は長さ(高さではない)が600mあると言うので、まずは下流から寄ってみるが…これは滝というより渓谷だ。確かに迫力ある流れではあるが、これを滝と言ってしまうのはいかがなものだろう。

View of Kiutaköngäs
滝と言うより渓谷では?

 元の道に戻ると、今度はさらに上流に行ける道を発見。これは当然行かずにはいられないので直ちに川岸に近づくと、今度は正真正銘の滝、しかもかなりの大迫力で流れている。滝の上は穏やかな流れなので、この激変ぶりは見事だ。滝の上のすぐ横まで行ってみると、あまりの迫力に飲み込まれてしまいそうである。これは見応えがあった、と言わずにはいられない。

Kiutaköngäs
キウタコンガス

Closeup Kiutaköngäs
上から見ると飲み込まれそう

 この滝の景観を十分に堪能したら、すぐ先のビジターセンターで昼食を取ることにする。ところが、いざ着いてみるとものすごい人だかり…先ほどの小学校の団体がカフェを占拠しているほか、日帰りの観光客、しかもバスが到着したところで、これから歩こうというバックパッカーで大混雑だ。先ほどまでの静寂が夢のよう…しかしお腹も空いたので、ここで軽食を取ることにした(思ったほど良い食べ物はなかったが)。

 しばらくすると団体をはじめとして皆出かけてしまい、一気に人気がなくなった。とりあえず一安心で、休憩ついでに少し展示物などを見て、3時頃に再出発。川を渡り、再びオウランカ川に沿って北上を開始する。もっとも、今度は川から距離があるので、あまり意識することもないのだが。

 この辺りも本当に楽な道で、しかもすれ違う人もなく、快適に歩いていく。1時間ほどで川と池を展望するキャンプ地に着いたが、ここには先客(5人ほどのグループ)がいたので、先へ急ぐことにする。さらに進むと、左手奥に突然、動物が現れた。痩せた牛?…いや、ムースだろうか。とにかく久々に見た大物であった。

 なおも先を急ぐと登りが現れるが、この辺りの森は深く、とりわけ苔が美しい。この地帯を抜けると下りになり、まもなくタイバルコンガス(Taivalköngäs)の渓谷が見えてきた。渓谷自体は先ほどの滝より見劣りするが、ここは旧道と新道の分岐点で、今日の宿の候補である。ところが、小屋に着くとかなりの人ごみで騒々しく、とても余分なスペースはなさそうだ。まぁ良い。どちらにしても、この先にはすぐ山小屋があるのだから。

Oulanka moss
苔の森

 最長記録達成も…

 この先、旧道をゆくか、新道をゆくか、というのもまた問題であった。バスは早朝と昼過ぎの2本のみ。どちらでもその日のうちにロバニエミに行けるが、この様子だと、早く北上してしまった方が良いように思えてきた。そうなると、新道ではハウタヤルビの手前に小屋がないので無理、対する旧道は最後の4kmほどのところに小屋があるので、旧道が良さそうだ。だが、新道のオウランカ渓谷(Oulanganköngäs)はいちおう見ておきたいので、ここのキャンプ場に荷物を置いて、片道5kmのサイドトリップに出かけた。

 ちょうどこの時、まるで私の邪魔をするかのように、10人近いグループが同じ方向に歩き始めた。一緒には歩きたくないので、私はキャンプ場でしばし待機。軽食を取り、30分ほど時間を空けてスタートしていく。楽々森歩きをこなし、分岐から登りをゆくと、しばらくして渓谷らしきものが見えてきた。あれがそうなのか? 半信半疑で近づいていくと、ちょうど先ほどのグループが帰るところで、どうやら目的の渓谷らしい。だが、近くまで寄ると木々が邪魔して良く見えない…確かに渓谷ではあるが、もうちょっと良い展望地が欲しいところだ。

Oulanganköngäs
オウランカ渓谷

 しばし鑑賞したら足早に引き返し、置いておいた荷物を担いで旧道に入っていく。この日は既に35km歩き、1日での最長記録を更新中だが、マラソンでもこの辺りは一番苦しいところ、気を引き締めて歩き始める。湿地帯を抜け、1.5kmほど歩いたところで小さな小屋が登場。見れば2人がのんびりと過ごしているが、ここでは早朝のバスが厳しいので、さらに3km先の小屋を目指してゆく。

  こうして、最後はさすがに足が痛くなったが、どうにかめでたく山小屋到着!ところが、よく見ると先ほどの10人グループが着いて間もない様子で佇んでいる。少々不安を覚えながら小屋の中を覗いてみると、別の2人組が食事中で、冷たく一言「この小屋はもう一杯で泊まれないよ」。そっ、そんな…普通、こういう時はスペースを空けるとか何か工夫するだろう!!と思ったが、こう言われてしまっては諦めるしかない。それにしても、こんなことになるなら、彼らに気を使ったりせずにさっさと歩いていれば良かった…

 今回は軽量化を図るため、テントは持参していなかった。こうなると、もう前進して野宿するか、元の道を引き返すしかない。今さら戻るのもなんだし、早朝のバスには乗りたいので、こうなったらもう野宿だ、と覚悟を決めて、先に進む…しかなかった。

Ristikallio
リスティカッリオ

 小屋から一登りで、リスティカッリオ(Ristikallio)の展望地に到達。もう急ぐ必要はまるでないので、ここで休憩するが、それにしても空しい。ここまで42km以上歩いてきて、ビバークせざるを得ないなんて…しかも、これが生まれて初めてのビバークだ。何という不運…

  考えれば考えるほど、空しさがこみ上げてきた。いっそこの崖から落ちてしまおうか…いや、いかんいかん、こんなことで死んだら元も子もない。正気を取り戻すと、またダラダラと歩き始め、湿原の長い木道を越えて、ついに車道に到着した。

Last marshland
最後の湿原

 時は既に11時過ぎ、45km歩き通した末の野宿だ。不幸中の幸いは、白夜で空が明るいことと、雨が止み、思ったほど寒くないこと。さっそくテーブル席の横に寝床を作り、防寒体制を万全に整えて、後はもう寝袋にくるまって眠るのみ。まもなく蚊が寄ってきたので蚊避けネットも装備して、悲しい眠りにつくのだった(これまでの経過を考えたら泣いてしまいそうなので、ただただ眠る)。

 そして翌日は早起きしたが、幸い、何事もなくビバークできた。バスを待っていると、昨夜冷たい一言を言い放った2人もやってきたので、形式的な挨拶を交わす。バスは7時過ぎに登場し、多くの学生たちを乗せてクーサモへ。9時前に街に着いたら急ぎ宿に戻り、荷物を引き取って9時半のロバニエミ行に乗車した。いよいよラップランド(Lapland)が視界に入ってきた。

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