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ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド(世界自然旅)

36.雄大なるフィヨルド (2003/3/1:曇時々晴

 前言撤回

 月は明けて3月、この日は休養日に当てるつもりだったが、空を見ると晴天であった。予報では天候が崩れて雨が降ることになっていたが、これなら十分持ちそうだ。そうなれば動かぬわけにはいかない。そこで、昨日諦めかけていたゲートルード峠に向かうことに決め、急遽バスの手配を済ませて、9時半にテ・アナウを後にした。

 バスは途中マッカイ・クリークに立ち寄りつつ、北上していく。ところが、テ・アナウではあれだけ晴れていたのに、北上するにつれて雲が厚くなってきた。ディバイドでルートバーン・トラックに向かう大多数の客を降ろし、ゲートルードの入口に到着すると、早くも小雨がぱらつき出すという嫌な展開…だが、ここまで来たら行かずにはいられないので、雨対策を施して歩き始めた。

McKay Creek
マッカイ・クリーク

  ゲートルード峠は、ホーマー・トンネルの手前から始まる往復4時間のコースだが、『地球の歩き方』はもちろん、外国人旅行者のバイブル、ロンリープラネット社のガイドブックやDOCのリーフレットにも紹介されていない(地図には載っている)。私はコロミコ・トレックのパンフレットを見て、いつか行きたいと思っていたが、一般には馴染みのないところなのだ。

  そのため人は少なく、私以外には、少し前に若いカップルが歩き出しただけであった。しかし、バスの運転手は良いところだと言っていたし、通の間では知られているらしい。そういうところはハズレが少ないので、期待に胸を膨らませて歩を進めた。

Gertrude wall
ゲートルード渓谷に聳える岩壁

 最初はゲートルード渓谷に沿って、谷の下を歩いていく。正面の山は霧がかって全貌を伺えないが、迫力ある岩壁が印象的である。あの岩壁のどこを登るのだろう、と不思議に思いながら進むと(少々道のわかりにくい場所もあるので、注意が必要)、30分ほどで正面の岩壁が間近に迫り、まもなく登りが始まった。道は岩壁に向かうのではなく、その左手の緩やかな斜面に作られていた。

Gertrude Valley
ゲートルード渓谷を見下ろす

 これぞフィヨルドランド!

  2人組を追い越し、ジグザグに切られた斜面を登っていくと、やがて迫力ある沢と滝が現れた。ここを渡渉してさらに登ると、その先にはまた滝が現れ、その上にも滝が見える。この辺りからは完全に岩場となり、岩盤上を沢が流れているため、多くの滝ができるのだ。振り返れば谷越しの山々の景色も素晴らしく、フィヨルドランドらしい勇壮な景観が広がっている。

Gertrude falls (1)

Gertrude falls (2)
名もなき滝たち

  ここを越えていくと、まもなく雪渓が出現した。これは避けられないので、滑らないよう注意しながら歩を進める。これをこなすと岩盤歩きとなり、所々ロープが張られる中、巨大な岩盤上を登攀。斜度自体はきつくないが、岩に付着したコケの影響で、濡れたところは非常に滑りやすく危険だ。できるだけ乾いた箇所を探して登っていった。

 滝がすぐ真横を流れる岩盤を越えると、ブラック・レイク(Black Lake)が現れた。小さな湖だが、休憩には良い場所だ。ここまで1時間半弱、もう峠も近くなってきたので、ここで英気を養うべく小休止とした。

  再び登り始めると、まもなく大きな雪渓が見えてきた。この先には踏み跡もあるが、だいぶ古そうな感じだったので、すこし下がって岩場を転々と歩いていく。部分的にはきつい箇所もあるが、雪渓を歩く恐怖と比べればずっとマシだろう。

  峠が近づいたところで振り返ると、来し方の谷が迫力ある姿を見せている。相変わらず雲が多いが、時折晴れ間も覗くので、後は天候が崩れないことを祈って峠を目指した。

Black Lake
ブラック・レイク

Gertrude rocks
峠手前より振り返る

 こうして、歩き始めから2時間ほどで峠に到達。すると向かいの展望が突然開け、勇壮な景色が広がった。峠の先は急激に切れ落ち、周りの山々を含めて、迫力あるU字谷となっている。その先にはミルフォード・サウンドも遠望でき(マイター・ピークは雲に隠れているけれど)、これぞフィヨルドランド!といった光景だ。

  日帰りコースでこれだけの景観が見られるところは、そうはないだろう。これが氷河によって作られたのかと考えると、自然のパワーに驚かされる。昨日までは行くのを止めようと思っていたが、来て正解であった。

View from Gertrude Saddle
ゲートルード峠よりの眺望

 峠は私1人だけだったので、昼食も兼ねて、この景色を1時間あまり独占する。しかし徐々に雲が厚くなり、ミルフォード・サウンドには霧がかかり始めてしまった。再び小雨も降り出したので、登ってきた中年カップルに峠の素晴らしさを伝えて、岩場の下りにかかった。

  ブラック・レイクまで下ると、ここでほぼ同時に出発したカップルが登ってきた。雨が降ってきたので、彼らはここで引き返すらしい。もったいないと思いつつさらに下ると、岩場がだいぶ滑りやすくなってきた。そこで雪渓を避けようと沢沿いを歩いてみるが、足元が滑ってとても怖い…やむなく慎重に引き返し、雪渓を一層慎重に下って最大の難所を越え、後は急下降をこなして谷の下まで降りたのであった。

 道はどこだ?

 これで安心なので、雨もほぼ止んだことだし、雨対策を解除してしばらく休んだ。そして、ここからは快適な谷下りのはず…が、油断していたら道がわからなくなってしまった。仕方なく涸れた沢沿いを歩くが、岩が多くて時間がかかる。岩場歩きにも飽きたので道を探すも、あるだろうと思っていた方向に行っても見当たらず、しまいには完全に見失ってしまった。

  仕方なく道なき道を進むと、しばらくして、先ほどのカップルが沢沿いに歩いているのが見えた。もうだいぶ離れてしまったので、それから20分近くかけて正規のルートに戻り、後は来た道を引き返していった。

  こうして国道に帰着すると、バスまでは残り30分ほどあったが、たちまちサンドフライの襲来に遭い、辛い時間を過ごすことになった。イスラム教徒の女性のようにフリースを顔に纏って被害を防いだり、時々フリースを振り回して追い払おうとするが、なかなか思うようにはいかない。長時間の格闘の末、時間より少し遅れてバスが到着し、ようやく難を逃れることができた。

 テ・アナウに戻ると、やたらと日本人が多くて賑やかであった。YHAではありがちなことだが、この日はなぜか中年の男性グループがいてうるさい(スーツケースで来たらしい…)。そして翌日は完全な休養日にあてて旅行記の執筆に励むが、この日はまたなぜか日本人の女性が多く、ケプラー・トラックを歩く人に適当なアドバイスをしたり、ゲートルード峠を紹介してみたりした(果たして役に立ったかは不明)。

  ともかく、こうして2年2ヵ月ぶりのフィヨルドランドの旅は幕を閉じたのであった。

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