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旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

14.にわかピーク・ハンター (2004/5/3:曇時々雨時々雪時々晴

 面倒なので最高峰

 今日の予報は雨だったので、昨日の疲れもあって休養日にしようと思っていたが、いざ起きてみると青空が覗いて、思いがけず良い天気だ。これなら出かけないのはもったいないと、急遽準備を整えて出発することにした。

 もともとの予定では、今日は南のマモレス山群を歩こうと思っていた。しかし、昨日見た限りでは想像以上にきつそうな勾配で、しかも登山口まで再び片道6kmを歩かなければならない。予報は変わっていないので、ここを歩いている間に天気が崩れてきたら最悪だ…

  そこでふと考えると、すぐ目の前に聳える、英国最高峰のベン・ネビスなら登山口は目の前だし、時間もそれほどかからないらしい。それなら、面倒なのでいっそ最高峰に登ってしまおう! ということで、それまで全く検討していなかったのだが、にわかピーク・ハンターとなって「ベン」(イギリス人はこう呼ぶ)に挑戦することにした。

 いざ出発の段になると、晴れているにもかかわらず、にわか雨になってしまった。ここは一時待機し、止んだところで歩行開始。しかし、しばらくするとまた雨…降ったり止んだりで安定しない天気だ。

  急登をこなしていくと、ビジターセンターからの道に合流し、ここからは比較的緩やかな道になった。ここはさすがに登る人が多いと見えて、道は非常に良く整備されていて歩きやすい。

Glen Nevis
ベン・ネビス麓の集落を見下ろす

 こんな時期でも結構歩いている人がいて、道中には何人もの人の姿が見える。いつの間にかカンカン照りになって、一気に汗ばんできた。急斜面を迂回しながら進むと、まもなくロチャン・ミール(Lochan Meall)の池が見えてくる。山の上の方も、時々垣間見られるようになってきた。これなら何とか大丈夫そうだと確信し、さらに上へと登っていった。

Lochan Meall
ロチャン・ミール

Cliffs of Ben Nevis
ベン・ネビスの崖

 何も見えない…

 分岐を右に進み、緩やかに高度を上げていく。振り返ればロチャン・ミール越しにフォート・ウィリアムの街並みが見えて美しい。前方にはマモレスの山、眼下には集落を見下ろすことができる。素晴らしい限りだ。

  この辺りでほぼ中間点、意外に楽なものだと思っていたら、不意に雲が厚くなって、また雨が降り出してきた。登るにつれて霙になり、雹へと変わって痛いほどで、しまいには完全に雪になってしまった。足元も雪だらけとなり、周りはガスで良く見えない。このままでは登っても何も見えない、という最悪の展開になりかねない…そんな危惧が、にわかピーク・ハンターの心を揺さぶるのであった。

 足跡を頼りに登っていくが、周りは白一色、所々黒い岩が露出しているとはいえ、霧と雪で視界が利かない。しかも前方に見えていた人たちをことごとく追い抜いてしまったので、まるで人の姿も見えない。遭難だけはしないよう注意しながら歩くが、ふと気がつくと、足跡が消えてしまった。どう見ても地形的にコースは合っているのだが、踏み跡からは外れてしまったようだ。やむなく、道らしき所を選んで歩いていくが、この山は崖が多いので、滑り落ちたら一貫の終わり、気をつけなければ…

 雪を踏みしめながら登っていくが、一向に天気は回復せず、相変わらず何も見えない。岩には「海老の尻尾」と言われる現象(雪などが強風に煽られて岩に付着し、海老の尻尾のような模様を付けることから名づけられた)が見られ、この一帯の自然の厳しさを教えてくれる。しばらくすると、先の方に黒い影が見えてきた。下りてくる人たちだ。すると、まもなく踏み跡に合流したので、ここからはそれに沿って歩いていった(後で調べたところ、この付近は道が2つに分かれていて、私は迂回コースの方を歩いていたようだ)。

Snow rocks
海老の尻尾だらけの岩

 もうだいぶ登ってきているはずだが、山頂はまだ見えない。風雪は当然強く、どこまで行くべきか、迷いが生じてきた。ここまで来て登らないのも癪だし、かと言って無理に登ったところで何も見えないのでは、登る意味がない。そんな葛藤を繰り返していると、不意に岩の裂け目が見えた。霧と雪でその全貌はわからないが、左側の斜面が完全に切れ落ちているようだ。いよいよ危険地帯だ、と思ったら、かなりの人数が引き返してくる。そう言えば道はだいぶ平坦になってきた。山頂は近いのだろうか。

 ここから少し進むと、目の前に標高点らしきものと社のようなものが見えてきた。どうやら、ここが最高峰らしい。先ほど大勢が退散したおかげで、ここにいるのは他に4人のみで、彼らもまもなく下りてしまった。1人になったが、寒くてとても長居はできない。周りは崖になっているので、下手に動き回ることもできない。天気の回復する気配は皆無だったので、ここはおとなしく下山することにした。

Top of Ben Nevis
吹雪のベン・ネビス山頂

 下りると天候回復

 しばらく下っていくと、また足跡を見失ってしまった。どこだろう、と右手に進んでいくと、上から「崖に近づくな!」と大声が聞こえてきた。確かに、良く見ると右手には黒い影が迫り、ぽっかりと口を開けているようだった。慌てて引き返し、まもなく踏み跡を発見。後はこれを見失わないように歩いていった。

 雪道を慎重かつ大胆に下りていくと、しばらくしてようやく霧が晴れ、視界が開けるようになってきた。本当に、上と下では大違いだ。さらに歩を進めると、晴れ間すら望めるようになり、何だか口惜しい限りである(それでも、山頂はずっと霧に覆われていたが)。しかし、こうなれば展望は抜群で、ジグザグに下りながら、マモレス山群やフォート・ウィリアムの景観を楽しんだ。

View of Lochan Meall
ロチャン・ミール越しの展望

View of the Mamores
マモレス山群も見える

 昼食休憩を挟んでさらに下っていくが、再び天候が不安定になり、曇ったり雨が降ったりと非常に変わりやすい。せっかくなので今度はビジターセンター方面に下るが、下り終えた辺りでまたも雨が降り出してきた。まったく、本当に気まぐれな天気だ。

 雨宿りも兼ねてビジターセンターに立ち寄ったら、YHAへと戻っていく。しかしこの間もまた雨に降られ、雨具をしまったのが裏目に出てしまった。それでも止み間を縫って宿に帰着。預けておいた荷物を受け取り、雨宿りと歩行を繰り返しながら、フォート・ウィリアムまで歩いていった。

 本日の宿に着く頃には雨も止み、無事チェックインを済ます。連休最終日とあってこの日は街中も静かで、店も開いておらず閑散としている。ほぼ唯一開店のファースト・フードで食事にありつき、何とか生気を取り戻すことができた。

 それにしても、これだけ苦労して山頂にたどり着いても、達成感のようなものはなく、むしろ中腹から見た展望の方が印象的であった。国の最高峰に登るのは富士山(日本)に次いで2つ目だが、やはり私はピーク・ハンターには向いていないらしい。今度同様のことをする時は、必ずや天候の良い時にしよう、と心に誓うのであった。

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