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旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

13.荒野をさまよう (2004/5/2:曇後雨

 宿がない

 グレンコーの次は、すぐ北にあり、英国最高峰のベン・ネビスを擁する地域に移動する。起点となる街、フォート・ウィリアム(Fort William)へのバスは9時半頃通過するので、それに間に合わせるべく、8時半過ぎには喧騒の宿を出た。

 連休の中日とあって、さすがにバスはガラガラで、なんなく乗車することができた。バスは風光明媚な湖に沿って進んでいくが、道中の宿を見ていても、さすがにどこも「満室」の表示ばかりで、不安が募ってくる。

 30分ほどでフォート・ウィリアムに到着すると、さっそく宿探しを始める。この街にある安宿は2軒で、まずは街中の宿に向かうが、ここにはしっかり「満室」との表示があり、諦めて次に向かう。もう1つのFort William Backpacker'sは、遠くないものの丘の上にあり、重たい荷物が恨めしい。どうにか目的地にたどり着き、受付で聞いてみるが、こちらも今日は満室だ。うぅ、甘かった、どうしよう…道すがらの宿はどこも満室だったし…

 すると、頼んでもいないのに、受付の人がベン・ネビスの麓にあるYHAに問い合わせてくれ、こちらはまだ空きがあるとのこと。すかさずこれを確保するが、ここからは数キロの距離があり、荷物付きで歩くのは辛い。すると、幸運にもたまたま同じ方向にタクシーで向かう人が現れたので、これに同乗させてもらえることに! お礼も兼ねて翌日の宿として予約を入れ、この街を去った。

 YHA前でタクシーを降り、無事チェックインし、ようやく重たい荷物から解放された。天気予報を確認すると、今日一杯は曇りがちながら、雨はほとんど降らずに済むとのこと。しかし明日は雨で、午後からは激しく降るらしい。ならば、こうしてはいられない。急ぎ身支度を整えたら、宿を出てさっそく歩き始めた。

Ben with sheep
雲隠れのベン・ネビス with 羊

Ring of Steall
マモレス山群を望む

An Steall
スティール滝

 荒野で迷子?

 本日は「島への道」(The Road to the Isles)と名づけられたコースを歩く。ここは昔、スコットランド中心部とスカイ島(Isle of Skye)とを結ぶ街道だったところで、現在は、フォート・ウィリアムの南からコロー(Corrour)までの区間、約23kmがウォーキング・コースとして人気を博している。

  このコースは通常、コローから西に歩くのだが、日曜日となると、コロー発の日帰りは無理…コローには鉄道しか通じておらず、便数が極めて限られている(夕方以降の1往復のみ!)ので、宿泊するならともかく、日帰りでは逆に歩くしかない。日程と天候の都合上、どうしても今日中に歩いておきたいので、ここはコローに向けて、東に進路を取ることにした。

 さて、宿から登山口までは6kmあまり。タクシーを使うこともできるが、お金がかかるし、コローからの列車は夜の9時過ぎと、既に昼時ではあるものの、時間的には余裕があるので、のんびりと歩いていく。左手に雲隠れのベン・ネビスを見ながら淡々と進むと、正面にはマモレス山群(The Mamores)の姿が見えてくる。明日、天気が良ければ歩こうと思っているエリアだ。そして1時間ほどで滝が現れ、観光客で賑わっているが、大したものではないので素通り。さらに奥へゆくと、巨石を配した渓流が見られるようになる。この辺りの景観は、なかなかどうして、悪くない(日本的な美?)。

  1時過ぎに道路の終点に到達すると、たくさんの車、それに観光客でビックリ。大混雑だ。彼らの目当ては、この先のスティール・メドウ(Steall Meadows)という景勝地で、家族連れなどが詰め掛けている。道は当然良く整備され、何てことのない登りのはずだが、宿探し等でかなり体力を消耗したため、思いのほかシンドイ。右手に迫力のネビス渓谷(Nevis Gorge)を眺めながら歩いていくと、突然平坦なメドウに出て、目の前にスティール滝(An Steall)が現れた。落差100mほどで、優美な姿を見せてくれている。

Nevis Gorge

Rocks at Nevis Gorge
ネビス渓谷

 しかし、この先に進むとめっきり観光客が少なくなり、一転して静寂の雰囲気となる。そして、スティール・コテージ(Steall Cottage)跡で小休止。すると雲が低くなり、小雨がぱらつき始めた。風も強くなってきて、非常に寒い。そこで防水・防寒対策を施して歩き出すと、まもなく反対側から多くの人が歩いてくるのが見える。ちょうどこのコースを縦走してきた人たちのラッシュ時間帯のようで、軽く2~30人とすれ違った(しかし、逆方向は私のほかに、おじさん2人組が駆け抜けていっただけ)。

 広々とした谷の中を歩いていくと、ほどなくして登りに差しかかる。この辺りからは道の状態も悪くなって、結構苦労させられる。背後にはマモレスの山々が見て取れ、これで天気が良ければベン・ネビスも見えるわけだから、きっと素晴らしい展望だろう。想像力を働かせながら歩いていくと、登りはまもなく終了し、この先の広大な荒野が視界に入ってきた。

The Mamores
マモレス山群を振り返り見る

The Road to the Isles
荒野が広がる

 ところが、ここで道を見失ってしまった。不明瞭な箇所が多いなと思ってはいたが、完全に迷子になってしまったのだ。上下左右に道を探すも、これだけ広い原野なので、そう簡単に見つかるはずがない。しまった、油断した…

  仕方ないので、とりあえず前方に向けて歩き出す。自分は今、いったいどこにいるのだろう、ちゃんと文明世界に戻れるだろうか…などと不安になりながら、荒野をさまよっていく。途中で獣道か、頼りない踏み跡を見つけたので、それに従って歩いてみるが、それもすぐに消滅。深い草原が続き、体力の消耗も著しいので、不安はさらに増幅されていく。

 このままではまずいので、いったん立ち止まり、改めて地図を確認する。と言ってもガイドブックに載っていた略図しかないので、そこから今いる場所と正規の道を突き止めざるを得ない。雲はより低くなり、辺りの景色から場所を割り出すのは困難なので、道の方を探した。

  この先しばらくすると、道は沢沿いに進むことになっていた。沢は右手遠方に流れている。とりあえずそこに向けて歩くのが手っ取り早いだろうと、沢に向けて下っていく。この辺りも草が深く、湿地も多くて苦労させられたが、どうにか沢沿いに到達。すると幸運にも、ここから明瞭な道ができているではないか。これで一安心、しばらくはこの道に従って、難を逃れたのであった。

Binnein Beag
ビネイン・ビーグ (Binnein Beag)

 崩れゆく天候

 沢はか細い流れとなり、まもなく分水嶺にたどり着く。ここから前方の川に向かって歩いていくが、再び道が不明瞭になり、やがて消えてしまった…川岸を進むと、この先の分流が邪魔して渡れない。仕方なく迂回して渡渉ポイントを探し、どうにか靴を濡らさずにクリア。南岸に上がると道があって、再び淡々と歩くことができた。

 しばらくは放牧された羊たちを追っかけたりして遊んでいた(危害は加えていない)が、この頃から本格的に天候が崩れてきて、そんな悠長なことをしている余裕もないほど雨足が強まってきた(天気予報の嘘つき!)。避難する場所はどこにもないので、早歩きで先を急ぐと、1時間ほどで小屋が見えてきた。とりあえずここの木の下に逃げ込み雨宿り、だが西方はほとんど霧に覆われた状態となり、歩いてきた谷すら望めない有様だ。しかも、道に迷ったり草地を歩かされたりしたため、道半ばを過ぎたところだというのに既に6時…時間的にも危なくなってきた。

 まもなく小康状態になったので歩行を再開し、急ぎ足で川沿いを進んでいく。最初は順調だったものの、その先でやや太目の流れが合流してきた。橋はなく、ジャンプして渡れる距離でもない。細い部分は深さがあって、どうにも濡らさずに渡れるところがない。せっかくここまで濡れずに来たのに…散々歩き回ったが、どうにもならない。唯一、まだマシなのが、片足だけ犠牲にすれば渡れそうな場所。もう時間がないので、覚悟を決めて、右足を濡らしてジャンプ! 見事成功し、右足も中はほとんど濡らさずに済んだ。

Abhainn Rath
川に沿って歩いてゆく

 それからは、時折強まる雨の中、快調に飛ばしていく。1時間ほどで避難小屋が登場し、その先も、滑りやすい岩がちの道をこなして進む。だが、この辺りも時々不明瞭な箇所があって、なかなか思い通りにはさせてくれない。対岸では、追い抜いていったおじさん2人組がキャンプの準備をしている。帰るのを諦めたのだろうか…

 さらに40分ほど歩くと、ようやくトレイグ湖(Loch Treig)が見えてきた。ゆっくりしたいところだが、雨は一向に止まず、まもなく時計は8時…もはや一刻の猶予もないので、歩きながら展望を楽しむ。ここまで来ると道は広くなり、4WDなら通れそうな道が湖岸に沿って続くが、これが意外に長く感じる。残りは後1時間、鉄道の姿も見えないというのに、本当に大丈夫だろうか…と、何か物音が聞こえてきた。何だ? 上を見上げると、ノロノロと列車が通過しているではないか。あれが線路か、と一安心。道はやがて鉄道と並行して進むようになり、着々と前進することができた。

Loch Treig
トレイグ湖

 しばらくすると、道は線路の下を潜り抜け、さらに先へと延びている。これに従って登りにかかるが、だんだんと鉄道から離れていく…これではいけない、どこに連れて行かれるか不安になったので、途中から鉄道に向かって歩き、無事線路沿いに到達。しかし道があるわけではないので、こうなったら線路の上を歩くのが一番! と、大胆にも軌道上を進んでいく。ちょうど枕木の間隔と歩幅が合って歩きやすく、思いのほか順調に歩ける。

 それにしても駅は遠く、すっかり暗くなってきたというのに、なかなかその姿が見えてこない。しばらくすると、右手に道と歩く人を発見。そうか、あのガード下を潜るのではなく、そのまま線路の右手を歩いていれば良かったのか(この時間に歩き始めるのはどうかと思うが…)。そしてまもなく、ぼんやりとした明かりとともに駅が見えてきた。まもなく9時というところで、どうにか間に合った!

On the rail
線路上を歩く

 無事列車に乗車し、フォート・ウィリアムに戻ったのは夜の10時過ぎ。だが、宿までさらに数キロあり、タクシーは先客に持っていかれたので、暗闇の中を歩いて帰る(こちらでは不思議と晴れ間が広がっていて、星すら望める)。こうして11時頃に宿に戻ると、部屋の中はもう真っ暗で、皆眠りに耽っている。いい加減お腹が空いた(でも、途中では店が閉まっていて、何も買えなかった)ので、買い置きしておいたスナックと水で急場をしのぎ(涙)、眠りについたのであった。

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