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旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

12.岩稜の雪景美 (2004/5/1:晴時々曇

 本日は快晴なり

 クライマーの朝は早い。彼らは5時に起き出し、その物音につられて起こされる。昨日、うるさくてなかなか眠れなかったというのに…しばらくは寝ていたものの、眠れなくなったので起床し、とりあえず外を眺めてみる。すると、空は何だか白く、ぼんやりとしている。だが、トイレからもう一度見てみると、今度は青空が広がっている。どういうこと?

  そこで外に出てみると、一部に霧がかかっているものの、概ね晴れていた。全体的に霞んではいるが、この地方はスコットランドでも最も雨の多い地域、これなら上出来だ。急ぎ身支度を整え、他の若者グループがまだ寝静まる中、7時半には宿を出た。

 昨日同様、まずは登山口まで延々歩いていく。風は、昨日とは打って変わって無風状態で、楽々前に進める(こんな当たり前のことが嬉しい)。見ているのは同じ景色のはずだが、やはり晴天では美しさが違う。グレンコーを代表する景観、スリー・シスターズ(The Three Sisters)も輝いて見える。

The Theree Sisters
スリー・シスターズの絶景

 さて、今日は昨日より少し手前の谷、ロスト・バレー(Lost Valley)に入り、奥の山から展望を楽しむコースをたどる。これはロンリー・プラネットの本で"This is a stunning circuit on a rugged and beautiful mountains massif. The approach through the Lost Valley is particularly beautiful."と紹介されていたので、是非天気の良い日に歩きたいと思っていたところだ。

 登山口には2時間ほどで到着。駐車場から写真撮影している人はいるが、まだ歩いている人はいないので、これはラッキー!とばかりに、ギアー・アオナック(Gearr Aonach)を仰ぎ見ながら歩き始めた。

  橋を渡ると登りとなり、ぐんぐん高度を上げていく。好天も手伝って、久々に汗をかきながらの登りだ。振り返れば、谷から900mせり上がったアオナック・イーガッチ(Aonach Eagach)が迫る。さらに進むと狭い谷の中に入り、やがて前方にロスト・バレーが姿を現した。おぉ~と言いたいところだが、これは正直、想像していたほどの景観ではない。それでも、誰もいない中、静寂の「失われた谷」を歩くのは心地よい。ここはゆっくりと歩むことにした。

Gearr Aonach
ギアー・アオナックを見上げる

Lost Valley
ロスト・バレー

 雪化粧の山々

 谷の底をゆくと、ほどなくして脇から登りに入り、緩やかに標高を上がっていく。前方の雪山が迫力ある姿を見せ始め、背後にはロスト・バレーが広がっている。雪山は想像以上に険しい岩稜で、クライマーが憧れるのもわかる気がする。それに、雪が思いのほか残っていて、東側の急斜面はほとんど雪に覆われている。そして、この先にも雪渓が…果たして稜線まで登れるのか、少々不安になってきたが、行ける所まで行くことにして、気楽に進んでいった。

Looking back at Lost Valley
ロスト・バレーを振り返り見る

Rocks at Lost Valley
険しい岩稜帯

 展望を楽しみながら歩いていたら、いつの間にか背後に健脚のカップルが迫っていた。競争する気はないので、少し先の岩の展望地に出て一服し、先に行ってもらう。するともう一人、さらに健脚そうなおじさんが現れたので、3人が通り過ぎたところで歩行再開とし、彼らを道しるべに登っていった。

  すると、まもなく雪渓が現れ、先発隊が苦戦し始めた。私は、彼らが作った足跡を利用して登らせてもらうが、彼らは雪渓が困難と見て、右手の岩場に取りつき始めた。だが、雪渓を越えた左手の方が明らかに楽な地形である。それならと、私は数歩で雪渓を越えて斜面を楽々登り、気がづけば彼らを追い抜いていた。最後、稜線まで後数mというところで岩と雪が邪魔してくれたが、ここは雪渓に足場を作って見事克服し、一番手で稜線にたどり着くことができた。

Stob Coire Sgreamhach
ストブ・コア・スグレァマック

 稜線からは、当たり前だが反対側の谷と山々が一望のもととなる。すぐ南にはストブ・コア・スグレァマック(Stob Coire Sgreamhach:1072m)の雄姿も見える。徐々に雲が湧いてきていたが、なかなかの展望だ。しばらく景色を眺めていると、例の彼らが汗だくになって稜線に到達。賑やかになりそうな気配がしたので、すかさず稜線を歩き始めた。

 幸い、稜線上の雪はほぼ解けているので、問題なく登ることができる。辺りの雪化粧した山々が殊のほか美しい。ところが、予想以上に早く、彼らは登山を再開してきた(健脚の欧米人は、休みを取らない人が結構多い)。私はゆっくりしたかったので道を譲り、展望を楽しみながら歩いていった。

 稜線の目指す先は、この周辺で最も標高が高いビディアン・ナン・ビアン(Bidean nam Bian:1150m)。ここまで来ればもう目と鼻の先なのだが、彼ら3人が頂上に着くのとほぼ同時に、逆側から登ってきた3人組も山頂に到達してしまった。無人の頂きが、これで一気に6人…この喧騒に加わりたくはなかったので、私はその手前の小ピークに陣取り、展望を満喫しながらの昼食とした。

 急峻な岩場

 昼食を終えると、例の3人のうち、1人は引き返し始め、カップルは奥の山へと歩いていったので、頂上にいるのは3人だけになった。私が山頂に着くと、この3人組も重い腰を上げて歩き出したので、頂きを独占。しかし、良く見ると先の稜線からグループが迫っているし、雲が増えて天候にも不安が出てきたので、休憩もそこそこに、別の稜線を下り始めることにした。

 他の人たちの動向を見ていると、私が選択したルートを通る人は皆無で、皆ビディアン・ナン・ビアンの稜線に沿って歩いている。だがそのコースがどのようになっているのか、皆目見当がつかないので、今回はロンプラのコース通りに辿る。

 下り始めてみると、これが思っていた以上に急峻な岩場の連続で、結構苦労させられる(ぱっくりと切れ落ちたところもある)。おまけに一部雪が残っていて、手強い箇所がある。ちょうどこの時、逆側から登ってきた中年夫婦が雪渓を慎重にトラバースしていたが、上から見ると明らかに稜線伝いに歩いた方が安全だったので、牛歩のごときカップルを尻目に、私は稜線の雪を闊歩し、あっという間に雪渓を突破したのであった。

Bidean nam Bian
ビディアン・ナン・ビアン

 こうしてどうにか急な岩場をクリアすると、今度は一転して登りとなる。振り返れば、背後には雪に囲まれた岩稜、ビディアン・ナン・ビアンが険しい姿を見せている。これは迫力満点で、これを見ただけでも難所を下った甲斐があったというものだ。

  やがてストブ・コア・ナン・ローチャン(Stob Coire nam Lochan:1115m)の山頂に到達すると、前方にはアオナック・イーガッチの背後に、英国最高峰のベン・ネビス(Ben Nevis:1344m)と思われる山が見え、周囲の山々、そしてグレンコーの街並みも全て見渡せる。ここは最高の展望台だ!

Overview of Ben Nevis
奥に見えるはベン・ネビス

View of Glencoe
グレンコーの街並みを望む

 山頂でじっくり展望を味わったら、再びの岩場下りとなった。この山も意外に険しい形相を見せており、クライマーなら登ってみたくなる場所だらけだろう。この急な箇所を周りこみながら下っていくと、やがて比較的穏やかな台地、コア・ナン・ローチャン(Coire nan Lochan)に出る。

  ところが、ここから道が不明瞭になって、正規のコースがわからなくなった。とりあえず谷に向かって下っていくが、途中からはかなり危険な傾斜地だ。慎重に下っていくと、前方に道を発見したが、そこにたどり着くまでも難所の連続。何とかクリアできたものの、危ないところであった(コースはこの谷を迂回していたらしい)。

Coire nan Lochan
コア・ナン・ローチャンを見下ろす

Stob Coire nam Lochan
ストブ・コア・ナン・ローチャン

 そこから先は、谷に沿って下る明瞭な道になる。ここも結構急な下りが続き、足の弱い人には耐え難いところだろうが、気をつけながら高度を下げていく。眼下には国道を通る車が豆粒のように見え、横ではクライマーが岩を登っている姿も見られる。無事、谷の下に到着したのは4時過ぎ。休憩込みで6時間あまり歩いたことになるが、充実の展開に大満足の一日となった。

 夕方、宿に戻ると予想通りの喧騒だったので、荷物を置いたら街に出て、テイクアウェイの夕食を川辺で取った。辺りには誰もおらず、良い雰囲気だ。が、戦場に帰ると再びの喧騒…しばらくは横になってじっと耐える。その主因たる女子大生グループは、これからパブに行くとのこと。なぜか誘われたが断固断り、ようやく訪れた平和の中で今後の予定を練った。

  だが、しばらくするとまた別のグループが登場し、たちまち大盛り上がりになってしまった。この日も容易に寝付けなかったのは、言うまでもない。

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