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旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

11.目覚めのウィルダネス (2004/4/30:曇時々晴

 メーデーの恐怖

 スコットランドのストランラーに上陸したのは、夜明け前の5時。ふと気がつくと、他の人たちはもう外に出ていて、一人取り残された格好となった。慌しく下船するも、始発列車は7時過ぎで、仕方なく一人待合室で待機する。しばらくして太陽が昇ってくるが、まだこの時期の明け方は寒い…眠さと寒さを耐え忍びながら時を過ごし、ようやく列車の出発となった。

 列車は最初こそ空いていたが、やがて通勤通学客で満員状態となり、10時前にグラスゴー(Glasgow)に到着(久々に大きな街だ)。ここから次の目的地、グレンコー(Glencoe)まではバスしかないので、バス・ステーションまで歩いて向かう。さっそく次のバスの時間を調べると…なんと、先ほど10時に出ていったばかりで、次は15時までない。しょうがないので次のバスの予約を済ませると、食料の買い出し、現金の引き出し、昼食、散策など、諸々の用事をこなすことにした。

 明後日から週末のためか、15時発のバスは満席となっている(予約をしておいて良かった…)。グラスゴーを出て北上すると、まもなく「これぞ湖水地方」と言わんばかりの風光明媚な景観が広がる(イングランドの湖水地方よりよほど良い?)。さらに進むと、徐々に荒涼とした原野(ウィルダネス)の景色となり、いよいよハイランド(Highland)地方に入っていった。

  やがてグレンコー(Glen Coe)の近くまで来ると、一層迫力ある景観となり、乗客の目は釘付けに…これは想像以上だった。標高こそ高くないものの、雄大で変化に富んだ山並みが続いている。もともとグレンコーには2泊する予定だったのだが、これを見て急遽3泊しようと心に決めたのであった。

Entrance of Glen Coe
グレンコーの山並み

 バスは2時間半ほどでグレンコーの街に到着し、ひとまずYHAに向けて歩いていく。重い荷物に四苦八苦しながら、2kmあまりで宿にたどり着き、さっそくチェックイン。ところが、今夜は何とか泊まれるものの、明日以降は一杯だという。このグレンコー一帯は、スコットランドで最も人気のあるウォーキング&クライミング・エリアと聞いてはいた(ちなみに、ここもナショナル・トラストが管理している)が、まだ4月、シーズンよりだいぶ早いはずなのに…

  仕方なく一泊だけ確保して荷物を置き、すぐさま隣のLeacantium Farm Bunkhouseに赴き交渉。こちらはまだ空いているそうで、これで何とかなった。一安心でユースに戻り、シャワー、洗濯、荷物整理などを進めた。

 ここで気がついたのだが、明後日からはメーデーの連休だったのだ。今年の5月1日は土曜日、てっきりただの週末と一緒と思っていたのだが、よくよく調べると、イギリスに関してはちゃっかり3日(月)に振り替えられ、3連休になっているではないか。これでは混むのも無理はない…

 登山口が遠くて

 翌朝、チェックアウトを済ますとさっそくチェックインし、隣の宿に移動する。ところが、大グループが泊まることになったので昨日紹介のところは一杯となり、別のところなら空いているという。こういう時、個人客は立場が弱い…が、今さらどうこう言える状況ではないので、とにかく寝床の確保が優先。しばらく使われていなかった倉庫のような建物に移動し、ここに荷物を置いて、ようやく本日のお出かけとなった。

 宿から登山口までは十数キロ、車なら10分もあれば着いてしまうが、今は徒歩しか手段がないので、地道に歩いていく。強い向かい風と闘いながら進むと、30分ほどで国道に合流し、しばらく道沿いに歩を進める。ところがこの日の風は凄まじく、おまけにここでは吹き降ろしの風となって威力が倍増されている。横をトラックが通過しようものなら、もろに影響を被って、乱気流に体が乱される。かなりの前傾姿勢で歩くが、なかなか思うように進めない。こんな風、あのパタゴニアでも体験しなかった!

 悪戦苦闘しながらも徐々に前に進むと、やがて谷を見下ろすようになり、昨日バスで見た雄大な景色が視界に入ってくる。小雨がぱらついたりと、天気は優れないが、やはりこの景色は一見の価値がある。ここからさらに登っていき、登山口に着いたのは3時間後、もうお昼になろうとしていた。小腹が空いたうえ、既に結構体力を消耗気味…

 この日は、天気が良ければブアチャイル・エティブ・モア(Buachaille Etive Mór:902m)に登って展望を満喫し、悪ければその下の谷沿いを歩こうかと思っていたが、前者は明らかに無理、どころか危険である。そこでブアチャイル・エティブ・ビーグ(Buachaille Etive Beag)を周回する谷巡りコースを歩くこととし、携帯食をほおばり、スパッツを装備して歩行開始となった(あんまりのんびりしていると日が暮れてしまう!)。

View from Lairig Gartain
エティブ湖を望む

 泥との格闘

 歩き始めると、さっそく泥だらけの道が続く。このあたりは湿地帯、おまけに雪解け間もないとあって、かなりの悪路だ。比較的マシなところを選んで歩を進めるが、それでも時に避けきれず、靴が泥にのめり込む(スパッツがなかったら本当に大変だった)。大地はまだ目覚めたばかり、周りの草は茶色く色褪せていて、生気のない状態だ。

 最初の難関を突破すると、多少道も安定して歩きやすくなる(それでも、所々ひどい箇所があるが)。左手に聳えるブアチャイル・エティブ・モアは雲の中、しかし追い風に助けられ、ライリ・ガーテン(Lairig Gartain)の峠に緩やかに登っていく。1時間ほどで峠に到達すると、突然前方の視界が開け、エティブ湖(Loch Etive)や周辺の山々を望めるようになった。これは美しい景色なので、歩を休めてしばし風景を楽しんだ。

 この先は一転して急な下りとなり、風に押されながらも慎重に下っていく(途中でカップルとすれ違ったが、それが今日のコースで唯一見かけた人だった)。20分あまり進むと右折する道が現れたので、それに従いエティブ湖と別れ、ライリ・エイルド(Lairig Eilde)の峠に向かって登りをこなした。

  この辺りの道はしっかりしているので、それほど苦にならずに登ると、30分ほどで峠にたどり着く。が、再びの強い向かい風で、寒くて休むに休めない…急ぎ下りに入り、着々と前進していった。

  やがて、眼下に国道が見えるようになると、まもなく下山口に到着。ここまで3時間あまりと、登山口まで歩いた時間と大差ないではないか…

View from Lairig Eilde
ライリ・エイルドより

Aonach Eagach
グレンコーの谷が見えてきた

 ここからは再び車道に沿って下っていくが、下り+追い風なので、ずいぶん楽に感じる。しかも登山口よりは数キロ近づいているので、気分的にも楽だ。ただし、この時間になると連休をハイランド地方周辺で過ごそうという車で交通量が増大し、かなりの混雑となっている。ちょっと怖くなったので遊歩道に逃げて、できるだけ車道近くを歩かないようにして帰っていった。

 こうして、宿に戻ったのは6時頃。部屋には柄の悪そうな女子高生3人組がおしゃべりに花を咲かせ(お酒もタバコも…)、 男2人組も出たり入ったりしてウルサイ。彼らは7時過ぎに食事に出たが、その後も女子大生のグループなどがやって来て、騒々しいほど賑やかとなった。イギリスは紳士淑女の国、などと言われるが、この現状を見る限り、とてもそんな国ではない。

  結局、このボロ宿も一杯になり、夜遅くまで騒ぎは続き(出かけていた人たちも戻ってきたので、さらに悪化した、という方が正しい)、日付が変わってもなかなか寝付くことなどできなかった。

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