検索 Google
五輪館
Back|Next
旅巧館旅行記ヨーロッパ>イギリス&アイルランド
アイルランドの国旗

旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

8.モハーの秘策 (2004/4/25:曇時々晴

 断崖ツアーの戦略

 本日はアイルランド有数の観光名所、モハーの断崖に向かう。ここには1日1便のバスが走っているが、日帰りでは使えないうえ、今日は日曜日でお休み…よって車かツアーになる。車はないので必然的にツアーとなるが、それでは1時間しか見る時間がない。おまけにツアーは各社から出ており、時間帯が集中するため、一番混雑した時間に見物せざるを得ない。どうにかならないか…

 ゴールウェイに到着後、最も悩んだのがこの問題であった。一般に、モハーの断崖は駐車場からすぐの展望地から見るが、実は崖に沿って散策路が続いており、片道5kmほど、先端のハグズ・ヘッド(Hags Head)まで歩くことができる。どうせならここを歩いて、変化に富んだ断崖の景観を味わいたい…と、ある会社のパンフレットをよく見ると、通常の1日ツアーとともに、午後発の半日ツアーも載っている。これを組み合わせて、午前発のツアーでモハーに行き、午後発の分で拾ってもらえば、3時間以上の滞在が可能となる。これだ!

 そこでさっそくビジターセンターで聞いてみるが、こんなアブノーマルなプランには対応できないという。やむなくバスの運転手に直接交渉してみると、可能だが、席の保証はできないとのこと。彼曰く、午前発のツアーは大型バスなのでまず問題ないが、午後のツアーはミニバンで、20人程度の定員しかない(昨日は19人の乗客だったそうだ)。しかし、後ろの午後ツアーのバスには数名しか乗客がおらず、どうにも説得力がない…ひとまずその場は引き下がったが、もはやこれしかないので、この秘策に賭けてみることにした。

 と言っても、賭けには保険が必要だ。もし土曜日に出発し、午後の便に乗せてもらえないとなると、日曜はバスがないので、丸1日以上のロスとなり、しかもアラン諸島の目処がたたなくなる。だが日曜出発なら、先にアラン諸島の分は終えることができ、万一拾ってもらえなくても翌朝には公共バスがある。土曜と日曜を比較しても、日曜の午後の方が、明らかにツアーの参加者が少ないであろう。ということで、リスクを最小限に食い止めるために、こうして日曜出発としたのであった。

 ツアーは10時前発。私は予約を入れていなかったので、少し前に行って飛込みで参加するが問題なし。しかしツアーはほぼ満員で、大盛況の中のスタートとなった。

 出発すると、運転手が開口一番「今日は道路工事のためバレン高原の遺跡には行けません」と言う。場内からは一斉にため息…それはそうだ、バレン高原(The Baren)はもう一つの見所で、カルスト地形に忽然と立つ巨石遺跡が有名である。何故始まる前に言わないのか、大いに疑問が残るが、そんな思いとは裏腹に、バスは順調に走って最初のポイント、ドンガイレ城(Dunguaire Castle)に到着した。

  ところが、他社のツアーもほぼ同時にやって来たので、一気に人でごった返してしまい、雰囲気も何もあったものではない。そして、続いて向かったアイルウィー洞窟(Ailwee Cave)は有料制で、希望者だけが見学ツアーに参加する。結構なお値段なので私は不参加、軽い間食を取りながら1時間ほどボーッと過ごさざるを得なかった(約半数が不参加だった)。

view of the Burren
バレン高原付近の展望

View of Mohar
モハーの断崖

 断崖散歩

 やがてバスは坂を登り、バレン高原を通過していく。海岸が近づくと再び急な登りとなり、前方には断崖らしきものが視界に入ってきた。そして、まもなくモハーの断崖に到着。数十台の車に数台の観光バス、日曜の昼過ぎとあってすごい混雑ぶりだ。

  到着は1時半過ぎで、許された時間は1時間弱(出発時には少なくとも1時間と言っていたが…)。そこで皆ぞろぞろとバスを降り、足早に断崖に向かうが、私は最後に降りて、運転手に「もっと長くいたいので、帰りは午後のツアーバスに乗ります。よろしく!」と伝えた。いきなりの告白に運転手はとまどっていたが、すぐに状況を把握したようで、特段お叱りもなく了解してくれた。第1段階終了!

 こうして断崖に向かうと、いきなり屏風のような豪快な崖が目に飛び込んでくる。断崖は長さ8km、高さは最大で200mにも達するというから、そのスケールは想像以上だ。展望地に向かう途中には「危険なので崖に近づかないように」という注意書きがあるが、皆そんなものは無視して崖に立ち、下を覗き込んでいる。確かに、これは近くでこそ見る価値があるもの。私も崖から下を覗き込んで、その迫力を堪能した。

 続いて、今度はいよいよ崖沿いに歩いていく。まずは最も高い(と思われる)崖の上まで登るが、この辺りはさすがに人が多く、結構皆さん歩いている。途中からは入り組んだ崖の様子を窺い知ることができ、荒波に削られた奇岩も見えてくる。下を見えば恐ろしいほどの高さで、思わず足がすくんでしまう。

 ここからさらに歩を進めると、徐々に人の気配がなくなり、静かに景観を楽しめるようになった。もし単純にツアーに従っていれば、ここでもう時間切れで、引き返さなければいけないところだ。まもなく北方を見渡す展望地が現れたので休憩とし、遅めの昼食を取ったのであった。

Moher viewpoint
展望地より振り返る

 この先も、道はまだまだ続く。崖に沿うように歩き、アップダウンを繰り返しながら、はるか先の先端を目指すと、断崖は歩くごとに景色を変え、変化に富んだ風情を見せてくれる。崖に居を構える鳥たちが忙しく飛び回り、波が崖を洗う。ここまで来ると、ほとんど人と会うこともなくなり、人工的な音は聞こえなくなった。ひっそりと咲く花々、自然が作り出した奇岩、広大な大西洋の海原…何とも心地よい感覚である。

Moher south
奥は人気が少ない

Moher north
迫力の断崖!

  だが、目指す先端は思いのほか遠く、見えているのになかなか到達できない。断崖は徐々に高度を落とし、穏やかな景観に変わっていくが、先端は変わらず遠いまま。最後はやや急ぎ気味に歩き、ハグズ・ヘッドに到着したのは3時過ぎ。最初のんびりしたこともあって、1時間半近くかかってしまった。残りはもう1時間あまりしかない…乗り遅れたらシャレにならないので、若干のインターバルを置いたら引き返さざるを得なかった。

View to Hags Head
先端はまだ先…

View from Hags Head
ハグズ・ヘッド付近より

 乗り換えは…

 帰りは元来た道を戻っていく。絶壁の景色を堪能しながらも、巻き気味に進行。進むにつれて人の数も増えてくるが、さすがに昼間ほどの喧騒ではない。急ぎ足で何とか4時過ぎに駐車場の見える地点までたどり着くと、既に目的のバスは停車している。午後2時発なので、さすがに今すぐ出発ではないだろうが、正確な発車時間がわからないだけに、焦りは募る。

 やがて展望地に帰着。が、ここまで来ると反対側の展望台にも行ってみたくなる…少々不安はあったが、大丈夫だろうと信じて進軍。こちらは意外にあっさりしたもので、数分で登りきることができた。そして、ここからは少し引いた形で断崖を一望することができる。おまけに一本槍のような奇岩を真下に望むことができ、なかなか良い場所だ。じっくりと眺めたいところだが、時はまもなく4時半、もう出発してしまうかもしれないので、後ろ髪を引かれる思いで引き返していった。

Cliffs of Mohar
断崖が一望のもと

Moher rock
奇岩を見下ろす

 駐車場に戻ると、まだバスは停車したままで、おまけに誰もいない。ひとまず軽食を購入して一休みし、のんびり過ごす。5時前になってようやくそれらしき人たちが多くなり、まもなくバスの運転手が登場。幸運にも以前交渉した人だったので話は早い、さっそく聞いてみると「ノー・プロブレム」だそうだ。良かった…こうして乗客9名に混ぜてもらい、無事かの地を後にした。

 バスは海岸線を北上し、ドゥーリン(Doolin)の街を過ぎ、ファノーレ(Fanore)で再びの断崖見学となる。こちらは高さこそないが、荒々しく迫力ある景観が魅力だ。そして、海に突き出たブラックヘッド(Blackhead)に立ち寄り、東に進路を変えていく。と、ここで運転手がゲール語の歌を歌い始めた。続いて前列のテーブル席の人が歌わされる(そこは歌う席らしい)。このまま順番が周ってくるかと冷や冷やしたが、他に歌う人が現れなかったので終了。いやはや、良かった良かった…

Fanore
ファノーレ

Blackhead
ブラックヘッド

 その後、バスはキンバラ(Kinvara)の街で休憩を取ると、最後にドンガイレ城に立ち寄る。朝の喧騒とは打って変わって人がほとんどおらず、城には夕陽が当たって美しい姿を見せている(白鳥も特別出演)。そして、8時前に無事ゴールウェイに帰還。通常より長い1日ツアーとなったが、単純にツアーで周るよりも充実した時を過ごせたとあって、満足度の高い1日であった。

Dunguaire Castle
ドンガイレ城

 宿に戻ると、昨日の盛り上がりとは打って変わって人が少なく、とても静かだ。土曜と日曜ではこんなに違うのか、と改めて思う。ヨーロッパの週末は恐ろしい、と感じたのはこれが初めてだったが、これが序の口に過ぎなかったとわかるのは、もう少し先のことである。

Page Top
Copyright © gorinkan.org All Rights Reserved.