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アイルランドの国旗

旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

7.ドン・エンガスの悲劇 (2004/4/24:曇時々晴

 まずは情報収集

 ダブリン港到着は早朝6時で、ここからバスで市街に向かう。街は、さすがにアイルランドの首都だけあって、朝早いのに結構混雑している。普通ならここで街中見物でもするのだろうが、今回は素通り。まっすぐヒューストン(Heuston)駅に向かい、7時半発のゴールウェイ(Galway)行に乗車した。

 実はもともと、アイルランドでは北方のドネゴール(Donegal)地方を訪れたいと考えていた。ここにはアイルランドの秘境と言われるグレンヴェー国立公園(Glenveagh National Park)があり、歌手エンヤの故郷でもある。その神秘的な雰囲気に浸りたいと思っていたのだが、いざ調べてみると、この辺りは車がないと移動もままならないようで、今回の旅では無理だ(国際免許証を持っていない…)。そこでやむなく、少し南にある観光都市、ゴールウェイにまず向かうことにしたのであった。

 重苦しい空模様の中、列車は定刻通りに発車し、快調に進んでいく。辺りの景色はイギリスとそれほど大差なく、のどかな風景が続いている。ゴールウェイには予定通り10時14分着。アイルランド有数の街のはずだが、人気が少なく、どことなく寂しい。さっそく周辺を歩き、見つけた安宿Kinlay Houseにチェックイン、荷物を置いて外に出た。

 前述のように、ゴールウェイ行は急遽決定したことなので、この時点で十分な情報を把握していなかった。そこでまずはビジターセンターに赴き情報収集、見所を物色する。ここを起点に巡るポイントとしては、アラン諸島(Aran Islands)、モハーの断崖(Cliffs of Mohar)、コネマラ国立公園(Connemara National Park)の3つがある。いろいろと検討した結果、最後のコネマラは日帰りで訪れるのはもったいなさそうなので断念。明日アラン諸島、明後日モハーの断崖を訪れることとし、ひとまずアラン諸島行のバスとフェリーを確保した。

 明日から週末のためか、午後になると人の数が目に見えて多くなり、街は活気で満ち溢れるようになった。宿も到着時は閑散としていたのだが、帰ってみるとほぼ満員。ダブリンで寄り道していたら危ないところであった。

 アランでサイクリング

 翌朝、9時発の専用バスに乗車する。まだ4月だというのに結構な混雑で、バスはほぼ満員に近い。1時間ほどかけてロッサヴィール(Rossaveal)港に着くと、驚いたことに他にも数台のバス、フェリーは4台も用意され、皆続々と船に乗り換えていく。恐るべし、アイルランド…まさかこんな時期に、こんなに多くの観光客がいるとは考えてもいなかった。日本ではあまり知名度は高くなく、観光局のパンフレットにも「次に行く、もう一つのヨーロッパ」なんて紹介されているぐらいだが、とんでもない!

 さて、フェリーは順調にアラン諸島最大の島、イニシュモア島(Inis Mór)に向かって進んでいく。この日は風が強いため波も高く、かなり揺れている。天気が良ければ甲板に出るのも良いが、この日は今にも泣き出しそうな空と強風ゆえ、私は船内にこもって景色を眺めることにした。船は1時間弱で港に到着したが、多くの観光客、そしてそれを迎える観光用ミニバスで騒々しいほどだ。私はそこを素通りしてレンタサイクル店に直行し、自転車を借りて島巡りに出かけることにした(ツアーで周れば楽に決まっているが、この島の大きさから考えれば自転車が最適)。

 街を出て脇道に入ると、さっそく人気が少なくなり、石積みの塀が張り巡らされた、のどかな島の風景が見えてくる。まずは島の西端に向けて自転車を漕ぎ進めていくが、牧歌的な景観に海岸線が広がり、自転車で進むのが何とも心地よい。湾にはアザラシの姿も見える。途中ゆっくりしていると、ドイツ人の中高年グループが足早に通り過ぎていったが、他には目立った騒音もなく、のんびりと過ごすことができた。

View of Aran
石垣と海岸線が連なる風景

 脇道から本道に合流すると若干の賑わいを見せるが、最大の観光地、ドン・エンガス(Dún Aonghasa)への道を分けると再び静かになる。まもなく最初の観光ポイント、Clochán na Carraigeへの標識が現れたので、右折して坂を下っていく。辺りには誰もおらず、少々不安になったが、数百m進むと目的の遺跡が登場。しかし、石が円形に積んである程度で、いまいち琴線に触れるものではない(人がいないことから考えても、あまりメジャーな遺跡ではないようだ)。数分佇んだら元の道を引き返し、さらに西へと向かった。

 しばらく進むと、第2のポイント、7つの教会群(Na Seacht d'Teampaill)が見えてきた。これは教会跡のようだが、まずまずの見所のようだ。ところが、良く見ると30人ばかりの観光客が押し寄せていて、記念撮影に興じて大騒ぎしている。せっかくの遺跡も台無し…だが、しばらく待っていると時間となり、彼らは一斉に退散したので、それから誰もいなくなった遺跡を一人、巡り歩くことができた。

Na Seacht d'Teampaill
7つの教会群

 道はさらに西へと続いている。この先、集落を抜けると上り坂が待っていて少々辛かったが、登り終えれば展望が広がり、辺りの風景が一望のもととなった。やがて下りになり、西端が見えるようになってきたが、ここで牛が通せんぼ…3頭の牛たちが移動中で、前を行かせてくれない。彼らも焦ったのか、必死になって走っているが、しょせんは牛歩、ゆっくりとしたものである。

  そうこうするうちに行き過ぎたらしく、牛追いの犬に怒られ、ようやく脇に退いてくれた。こうして西端にたどり着くと、大西洋からの荒波が打ち寄せており、荒涼とした風景が最果ての地に来たことを実感させてくれる。辺りには、同じく自転車で来ていた老夫婦がいるだけだったので、ここで休憩とし、少し遅めの昼食を取ることにした。

West side of Aran
西端付近の眺め

Dún Aonghasa
ドン・エンガスの断崖

 強風にて悲劇再び

 食事をしていると、やがて代わる代わるツアー客がやってくるようになった。ちょうど食事を終え、端まで行ってみましょう、ということなのだろうか…これではのんびりできないので、残念ではあるが、食事を終えると早々にこの地を退いた。

 すると、まもなく脇道に入り、今度は海岸線近くを進んでいく。辺りは道の整備も十分でなく、自転車にはスリリングだが、それがかえって面白い。この辺も誰もおらず、それでいて荒涼とした風景が広がっていて爽快だ。

  しばらく進むと道は終わり、右折すると先ほどの教会跡が現れた。ここもやはり、ツアー客で結構混んでいる。先ほど寄ったので通過し、坂を登って本道に戻ると、いよいよ本日の目玉、ドン・エンガスに向かうこととなった。

 ドン・エンガスが近づくと交通量が多くなり、車に圧迫されて何度も停車を余儀なくされる。そして駐車場にやって来ると、数多くの車、自転車、観光客…すごい賑わいだ。ここで入場料を支払い、1kmほどの道のりを歩くことになるが、意外にもう歩いている人は少ない。麓から既に遺跡は見えているが、ここでのお目当てはその先にある断崖、海面から90mも切り立っているというから、是非見てみたいものだ。

  なんなく遺跡前に到着し、若者グループが記念撮影に興じているのを尻目に、まっすぐ断崖に向かうと、大迫力の断崖が目に飛び込んできた。すごい迫力! この日は風が強く、波も高かったのでなおさらだ。恐る恐る淵に立って下を覗き込めば、もう目のくらむような崖で、下から吹き上げてくる風がものすごい!!

 やがて、先ほどのグループが大挙押し寄せてきたので場所を移動。半円状の石積みの遺跡の中に入り(この遺跡自体は約2500年前のもので、何のために作られたのかは謎だそうだ)、さらに高いところから断崖を見やる。改めて、凄い迫力だ。しかもラッキーなことに、ここに来て少し陽が差すようになってきた。これはチャンス、強風に負けじと何度も崖を覗き込み、写真を撮る。

  すると突然、左目の視力が極端に落ちた…しまった、風でコンタクトが飛ばされてしまったのだ。探そうにも、この強風では一瞬のうちにはるか遠くまで飛んでしまったことだろう、諦めるしかない。オセアニアの悲劇再び…こうなるともう、断崖を覗き込む気はしない。飛ばされたショックと、もう片方も飛ばされるのではとの不安で、居ても立ってもいられない。意気消沈して、この遺跡を後にした。

Looking down at Dún Aonghasa
崖の下を覗き込む

Ruins of Dún Aonghasa
ドン・エンガスの遺跡

 ドン・エンガスを去ってからは、帰りのフェリーまでまだ1時間ほどあったので、再び脇道に入り、坂を登っていく。歩きならともかく、自転車にはきつい坂なので、途中からは押していかざるを得ない。坂が終わるとしばらく平坦になり、やがて下りとなるが、この辺りもスリリングな道なので、スピードを落として慎重に進んでいく。眼前には東側の展望が開け、早く下りるのがもったいないほどだ。

East side of Aran
東側の展望が開ける

 ゆっくり進みながら、ほどなくして元の港に到着。周辺は早めに戻ってきた観光客で大賑わいである。自転車を返そうとすると、店に来ていた子供たちが「コンニチハ」と声をかけてきた。慣れない微笑を返したら、残りの時間はビジターセンターで過ごし、5時発の船で島を去った。

 ゴールウェイに戻ると、今日は土曜日とあって大賑わい、宿も酒飲みであふれている。アイルランドはパブで有名な国なので、飲み好きならたまらないところだが、私はあっさりと部屋に戻り、予備に持ってきていたコンタクトレンズ(5年以上前に使っていたもの)を用意。後はほとんど引きこもり状態で過ごしたのであった。

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