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旅行記:イギリス&アイルランド(世界自然旅)

3.イギリスの自然 (2004/4/19:曇時々晴

 湖水地方へ

 ロンドンの次に向かう先は、以前から湖水地方(The Lake District)に決めていた。この地域は、ピーター・ラビットやワーズワースの故郷として名高いが、個人的な関心はむしろ、ここがイギリス一風光明媚と言われていることと、ナショナル・トラスト(National Trust)発祥の地であることにあった。

 ナショナル・トラスト――それはイギリスの自然や歴史遺産を管理する民間非営利の団体で、100年以上前の1895年に設立されたものである。この頃、イギリスは産業革命の成功を受けて栄華を極めたが、それは同時に国内の自然開発にもつながった。その魔の手がこの地域に忍び寄ろうとした時、この地の自然を残したいと有志が立ち上がり、以来、国内の保全価値の高い土地や歴史的建造物などを購入、管理に努めるとともに、そのほとんどが一般に開放されている(現在、会員数は270万人以上に上るという)。イギリスの自然の美しさを支えている代表的な組織であり、日本でも北海道の知床で、この方法に倣って土地を買い上げ、自然保護を進めているのは良く知られている。

 というわけで、まずは鉄道で、玄関口となるウィンダミア(Windermere)に向かう。時刻表によれば、10時半発の便が乗り継ぎが良いようなので、その少し前に駅にやって来て切符を購入。なぜか発車直前まで出発ホームがわからず、発表されるやいなや、皆一斉に早歩きでホームに向かった。幸い、私は首尾よくスタートを切ったので、自由席を確保した。

  ところが、あせって荷物も一緒に席まで連れてきてしまったので、とりあえず横の席に置いておく。徐々に席が埋まってくるが、隣りに座ろうとする人は現れない。もう席は一杯となったが、ぎりぎり、これで出発!と思ったら、最後に乗ってきた人が座りたいと…こうなったら仕方がないので、大きなバックパックを膝に抱えて、列車はロンドンを後にした。

 ヨーロッパの鉄道は(地下鉄を除けば)これが初めて。海外の鉄道というと、どうしてもアムトラックのように、トラックよりも遅いようなイメージがあったが、この列車は最初から快調に飛ばしていく。乗り心地も快適で、費用の高さを除けば悪くない。2時間ほどで最初の停車駅に到着すると、ようやく膝への負担が解消され、前方の視界も良好になった。さらにもう1時間でウィンダミア行に乗り換え、結局3時間半で目的地に着いてしまった(バスなら7時間以上かかるらしい)。

 ウィンダミアからは、ひとまずウィンダミア湖畔のアンブルサイド(Ambleside)に行き、ここのYHAを確保する(駅には迎えの車が来ていたが、宿の予約はしていなかったので乗せてもらえず、仕方なくバスで移動)。宿はイギリスらしい立派な建物で、ロケーションも抜群。さっそく受付で聞いてみると、全く問題なく、すぐにチェックインできた。まぁ、ウィンダミア行の列車とその後のバスがガラガラだったので、大丈夫だとは思っていたが。

Windermere
ウィンダミア湖

 ワーズワースの散歩道

 この日は朝から晴天で、イギリスで最も雨が多いと言われる湖水地方でさえも、雲が多いながらも晴れていた。こんな日に出かけないのはもったいない!と思い立って、既に午後3時になろうとしていたが、近くを散策することにした。

 目指したのは、北のライダル(Rydal)。ワーズワースが晩年を過ごしたライダル・マウント(Rydal Mount)のあるところだ。着いたばかりで土地勘がつかめず、車道に沿って歩いていくが、まだ4月だというのに、結構車がひっきりなしに通っていて怖い…辺りには多くの羊たちが戯れる牧歌的な風景が広がるが、その穏やかさもこれでは台無しである。1時間ほどで無事ライダルに到着し、ここから少し坂を上がってライダル・マウントに向かった。

Trees at Ambleside
道沿いの風景

Rydal Mount
ライダル・マウント

 さて、ここからは通称「ワーズワースの散歩道」と呼ばれる道をゆく。ここからグラスミア(Grasmere)にあるダヴ・コテージ(Dove Cottage:ワーズワースが1799~1808年まで住んでいた家)まで、丘の斜面に沿って歩いていく。彼がここで本当に散歩をしていたかは知らないが、歩いてみると、なかなか気持ちの良い道だ。道は比較的緩やかで、左下にはライダル・ウォーター(Rydal Water)が広がっている。車道からかなり離れたので、騒音に悩まされることもない。大感動とはいかないものの、綺麗な景色が続く。のんびり歩いていくと、30分もしないうちに街に向けて下り出し、まもなくダヴ・コテージに到着。あれれ、あっという間に現実に引き戻されてしまった。

Rydal Water
ライダル・ウォーター

Dove Cottage
ダヴ・コテージ

 まだこれしきでは辛くも何ともないので、今度は対岸の道を歩くことにする。しばらくはグラスミア湖沿いの車道を歩くが、ここもひっきりなしに車が通っていて興醒めである。しかしカーブを直進して遊歩道に入り、川を渡り、丘を上っていくと、再び展望が開けて、自動車の騒音も気にならなくなった。湖畔を散策する人は多いのだが、少し上に上がるだけで人はめっきり少なくなり、快適な散歩となる。しばらく歩くと突如、目の前に洞窟が登場。この地域に似つかわしくなく、不気味な風情を醸し出している(中にも入れる)。ここから下りとなり、最後に再びライダル・ウォーターの展望を眺めたら、まもなくライダルに戻り、めでたく一周達成となった。

Grasmere
グラスミア湖

Rydal cave
ライダルの洞窟

View of Rydal Water
ライダル・ウォーターの展望

 先人たちは何を思う

 時は既に6時過ぎ、YHAの食事が7時半までだったので、少し急ぎ目に帰ることとする。サマー・タイムのせいか緯度のせいか、この時間でもまだ十分に明るい。そして、相変わらず交通が止まない…こんなに車が多いとは、正直驚きであった。まだハイ・シーズンには程遠いので、これでもかなりマシな方だと思うが、もっと静かなところをイメージしていただけに、少々残念だし、これでは環境破壊が進行してしまう。上高地のように車両規制をすれば良いと思うのだが…

  しかもここの上空では、時々軍用機がかなりの低空飛行で飛んでいくので、その時の騒音が凄まじい(まるで爆撃でも起こるかのよう)。こんな現状を見たら、かつてこの自然を守ろうと立ち上がった先人たちはどう思うのだろうか。

 そんなこんなで歩いていると、徐々に雲行きが怪しくなって、宿の手前で小雨がぱらつきだした。最後は小走りで宿に入り、無事食事にありついて部屋に戻る。部屋は5人部屋だが、私ともう1人、イギリス人のおじさんだけでガラガラだ(定員は245人と大型だが、それでも最盛期にはいつも一杯になるらしい)。今日は短時間だったが歩くことができ、イギリスの自然を代表する、この湖水地方の雰囲気も何となくわかったので、明日からはさらに探求していこうと思う。

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