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旅行記:中国西南部(世界自然旅)

12.落胆の三峡 (2004/9/1-3:曇時々晴

 巨大ダム始動

 三峡は長江中流域の景勝地として知られ、瞿塘峡、巫峡、西陵峡からなっている。両岸から迫る断崖絶壁が魅力だが、そんな大峡谷も、世界最大級の「三峡ダム」の建設により、姿を大きく変えようとしている。

 三峡ダムは、中国の威信をかけた、万里の長城以来の大事業と言われており、2009年に完成すると、日本のダムの総貯水量の約2倍、発電量は年間847億kW時(日本の全水力発電量に匹敵)に達するという。既に2003年6月から貯水と発電を開始し、ダムの工事も2/3以上が終了。電力不足に陥っている中で、それを解消する切り札として期待されているのである。

 だが、これに伴う景観の変化と環境の悪化は計り知れない。水位は、最終的には175mほど上昇することになっているが、貯水開始から1ヵ月で、既に50mも上がったらしい。この辺りには三国志ゆかりの遺跡や史跡も多いが、一部を除くと、それらも水没してしまう。土砂の堆積や山崩れ、富栄養化なども心配されており、周辺に棲む動物(特に魚類)への影響が懸念されている。まさに問題だらけの公共事業なのだ。

 本当ならもっと前に来て、貯水が始まる前に通りたかったが、今となっては後の祭り。従来のような「天下の絶景」は望めないにしても、今の三峡がどうなっているのか、見届ける所存である。

 見所は素通り

 さて、朝早くにチケットを購入したら、出航は昼過ぎなので、それまで買い出しなどして過ごす。そして、いざ集合場所に赴くと、それらしき船は見当たらない…代わりにマイクロバスが用意されていて、どうやら、それを使って上流の宜昌に向かうらしい。まぁ、そこまで大した見所はないし、移動時間の短縮にもなるので良しとしよう。

 バスは数人の乗客を乗せて、宜昌へと走っていった。1時間あまりで目的の街にやって来ると、今度はそこも素通りして、さらに上流へと走り続ける。次第に険しい渓谷になり、いったいどこに連れて行かれるのだろう、と心配していると、やがて視界が開けて、噂の三峡ダムが見えてきた。

 この辺りには人民解放軍が多く、いくつものチェックポイントを越えていくが、さすがにダムの大きさは半端ではない(高さは180m以上あり、ピラミッドを上回る)。そして、バスはこのダムをも越えていき、結局その上にできた真新しいフェリーターミナルで降ろされた。

 船は3時頃やって来るとのことだったので、のんびりと待つことにするが、時間になっても船は現れず、次第に暗くなってきてしまった。段々と客がいなくなり、不安も募ったが、もうすっかり陽が落ちたところでようやく登場。予定より大幅に遅れたものの、無事乗船することができた。

 船内はお世辞にも綺麗とは言えず、特に最下層は汚らしい(船内の食堂はかなり安いのだが、それすら利用せず、カップ麺を食べている人が多い)。既にこの辺りは西陵峡なので、ふと外を見上げてみると、ぼんやりと断崖が聳えている気がするが、暗くて良くわからない…。これではどうすることもできないので、明日に期待して早々に眠りについた。

 ところが翌朝になると、周囲には平凡な景色が広がるばかりで、期待したような絶景はない。どうやら、巫峡も瞿塘峡も、そして支流・大寧河にある小三峡(龍門峡・巴霧峡・滴翠峡)も通過してしまったらしい。観光船ではなく、一般の定期船を利用したのは悪かったが、これでは見所は全て素通りではないか!

 変わり果てた景色

 いきなり意気消沈してしまったが、さらに驚いたことに、既に137mも水位が上昇しているではないか。岸辺に付けられた水位メーターを見れば一目瞭然で、それが長さ600kmに渡るというから、もう古の三峡の姿は消え失せたと言って良いだろう。そのお陰で、船はスムーズに航行しているものの、有名な遺跡が1,200以上も水没し、断崖絶壁の景観も水の中に消え、もう永久に戻ることはないのだから、やはり残念でならない。

Sanxia town
高台にできた街

Sanxia bridge
橋も各所で建設中

 しばらく走ると、前方に街が見えるようになってきたが、その姿も一種異様であった。岸辺近くの古めかしい建物は捨てられ、ゴーストタウンと化しているのに対し、丘の上には近代的な高層アパートやビルが乱立している。長江に架ける立派な橋はいくつも建設中だ。話によると、これに伴い100万人以上が移住を強いられているらしいが、周りを見るとダム建設を礼賛するものばかり…本当にそうなのかと疑いたくなってしまう(もっとも、反対運動を起こしたらすぐに刑務所に連れていかれるのだろうが) 。

 仕方なく、それからは何気ない大河の景色を眺めていたが、ここでも中国人のマナーは相変わらずひどい。彼らは何でも構わずポイ捨てするようで、たとえ近くにゴミ箱があっても気にせず、全て長江にポイ捨てしてしまうのだ。既に水質汚染が深刻化し、大量のゴミが船舶の航行に影響を与えているというが、それも納得の有様である。

Sanxia temple
石宝寨

 午後になると、世界8大奇観建築の1つと言われる石宝寨が見えてきた(ここは将来孤島になる)が、観光船ではないので通過していく。ここまで来るともう、断崖絶壁の景観など望むべくもないし、まもなく日も暮れてしまったので、後は適当にやり過ごすしかなかった。

 こうして翌朝には重慶に到着し、落胆の船旅を終えた。相変わらずの押し合い圧し合いと口論の中をターミナルまで上がると、続いては成都行のバス探しだ(この街は反日感情が強いので、日本人だと気づかれる前に脱出する)。近くの朝天門バスターミナルからは出ていないようで、重慶バスターミナルへの移動を余儀なくされたが、無事チケットをゲット。一転して豪華なバスに乗り、快適な心地であった。

 そして、成都には夕方前に到着。ここも非常に大きな街だが、茶館が多いなど独特の雰囲気があり、どこかのんびりした感じである。とりあえず歩いて観華青年旅舎(Sim's Cozy Guesthouse)に向かい、暗くなる前に無事発見。日本人経営のゲストハウスだけあって、受付でも日本語で応対してくれホッとする。中国に来てからというもの、かつてないほど疲れとストレスがたまるばかりだったので、久々に心休まる時が過ごせそうだ。

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