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旅行記:アルプス(世界自然旅)

62.悲しき道のり (2004/7/24:雨後曇時々晴

 恐れていた事態

 昨夜のうちに雨音らしき音がしていたので、嫌な予感はしていたが、起きてみると外は雨…霧がかかって視界も効かず、まるで歩く気になれない。しかし宿は既に予約しているので、今日は次のエリザベッタ小屋(Rifugio Elisabetta)まで歩かなければならない。恐れていた事態ではあったが、2日目にして早くも困難に直面してしまった。

 ところで、TMBにはところどころバリエーション・コースがある。一般に、ノーマル・コースは平坦で歩きやすいが、やや迫力に欠けるのに対し、バリエーション・コースはハードな道のりであるものの、景観が優れている。それに加えて今日のコースは、所要時間もバリエーション・コースの方が1~2時間も短縮できる。ならば当然バリエーションを歩きたいが、こちらはかなり急で危険な箇所があり、残雪も多いため、天候が悪いと難しいところだ。どうしたものか…悩ましい限りである。

 朝食を終えると、他の人たちは足早に小屋を後にするが、私は天候の回復を願って、しばらく小屋の前で待機する。大杉さんも仕方なく同調しているが、時間が経つにつれて焦りの色を見せ始めた。雨は時に弱まり、霧も時々晴れたりするが、またすぐに元に戻ってしまう。いったいいつになったら回復するのだろう…ついに痺れを切らして、大杉さんは10時前に出発していったが、私はさらに1時間近く粘り、11時頃になってようやく、諦めて歩き始めた。

 大苦戦の道

 道はいったんクロワ・デュ・ボンノムのコルに戻り、ここからフールのコル(Col des Fours:2665m)へ登っていく。周りは霧に覆われて何も見えないが、ただひたすら峠に向かって登る。やがて雪に覆われた峠(らしき所)に着くと、右手に登ってくる人の姿が見えた。ちょっとわかりにくいが、どうやら道は右に曲がるらしい。

  ここからは岩場の急下降。恐ろしいほど不安定で急な斜面を下っていくが、まだ雪も残っていてかなり危険だ。視界も効かないので慎重に下っていくと、いったん平坦な場所に出て一服。しかし、再び滝に沿っての急坂となった。いったい何で歩いているのだろう…考えれば考えるほど悲しくなってきた。

Waterfall near Fours
岩盤を流れる滝

 岩盤のような滝の下に出ると、急な下りは終わって、お花畑を緩やかに下るようになる。すると道は二手に分かれ、一方は沢沿いに続き、もう一方は幅広の巻き道となった。ここは近道の前者を選んだが、これが雨で滑りやすくて大変。完全な選択ミスだったが、下り始めたら突き進むより他にない。

  泥濘や渡渉に苦戦しつつ歩を進めると、途中からは幅広の道に合流し、いつの間にか牧草地に迷い込んでしまった。いかんいかん、これでは目の前の牛たちの邪魔だし、糞の匂いも強烈。少し引き返して脇道を探し、ともかくグラシエ村(La Ville des Glaciers)の集落に向けて下っていった。

 眼下に集落が見えるようになると、大杉さんが手を振って待ってくれている。そして、ここを下りていくとノーマル・コースに合流。何とか難コースをクリアできたが、何か空しさも残る展開だ。

 ここでトイレ休憩を挟んだら、先に見えているモッテ小屋(Refuge des Mottets)に向かう。この間は緩やかな道で、30分ほどで到着。もう2時過ぎだったが、食事が美味しいとの評判なので、ここで遅い昼食を取ることにした。

 急回復

 ガイドブックによると、ここから次の小屋まではさらに4~5時間。食事を終えて寛いでいると、残り時間を心配してか、大杉さんは先に出立していった。私はさらに遅れること20分で歩行再開。いきなりの急登にお腹が悲鳴をあげるが、ゆっくり登っていくと、次第に雲が晴れ、視界が開けるようになってきた。雨もほぼ止んで、ようやく回復に向かってきたようだ。

View of la Ville des Glaciers
グラシエ村方面が晴れてきた

Aiguille des Glacier
エギュイーユ・ドゥ・グラシエも覗く

 傾斜はまもなく緩くなるが、そこからは峠に向けて延々と登りが続く。振り返ればグラシエ村方面の谷が望め、正面にはエギュイーユ・ドゥ・グラシエ(Aiguille des Glacier:3816m)の姿も見えるようになってきた。悲しかった道のりが報われた瞬間だ。

  そして、ここからさらに一頑張りで、ようやくセイニュのコル(Col de la Seigne:2516m)に到達。ここはフランスとイタリアの国境で、峠からはヴェニの谷(Val Veny)やイタリア側の山々を眺めることができる(雲に隠れてモン・ブランやグランド・ジョラスは見えないけれど)。ここまで3時間かかると思っていたが、実際には1時間あまりで登れたのでもう大丈夫。しばらく休んで、この国境の別天地を心ゆくまで楽しんだ。

Col de la Seigne
セイニュのコルより

Vallon de la Lex Blanche
レックス・ブランシュ谷を下る

 十分に堪能したら下り始め、レックス・ブランシュ谷(Vallon de la Lex Blanche)を進んでいく。大杉さんは先に行ってしまったので1人のんびり歩くが、この辺りも開放的な雰囲気で、気持ちの良い道が続く。先ほどまでの悪天候は嘘のように急速に回復し、随分と晴れ間が覗くようになってきた。そして1時間ほど下ると、左手にレックス・ブランシュ氷河(Glacier de la Lex Blanche)と目指すエリザベッタ小屋が登場。最後の短い登りをこなして、午後5時過ぎ、無事本日の行程を終えるのだった。

 この小屋はTMBの中で最も人気があるらしいが、この悪天候のため、今日は満員ではないようだ。それでもイタリアらしく、食事は3コースディナーで非常に美味しいし、氷河を望むロケーションも素晴らしい。温かいシャワーもあって、こちらも至れり尽くせりだ。まだ2日目だが、TMBの山小屋のレベルの高さには驚かされるばかりである。

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