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旅行記:アルプス(世界自然旅)

60.女王は雲の中 (2004/7/22:曇後晴

 絶好の展望地へ

 今日もまずまずの天気。朝のうちは雲が多く、モン・ブランは山頂部分が雲に隠れているが、これも時間の問題のような気がした。そこでさっそく出発しようとすると、不意に日本人女性に声をかけられ、「モン・ブランを見るのに良い場所はありますか?」と聞いてきた。ハイキングはしたくないと言うので、ならばブレヴァン(Le Brévent)展望台が良いのでは、と答えて足早にその場を去った。

 さて、今日は昨日の続き、プランプラからモン・ブランの展望地として知られるブレヴァンを経由してシャモニに下る。ここも前半はTMBのコースで、モン・ブランの眺望がとりわけ素晴らしいところである。シャモニに着いたらテレキャビン乗り場まで登り、プランプラまで一足飛びで上昇(やはり文明の利器は便利なものだ)。そして、ここからブレヴァンへもロープウェイで数分だが、昨日の続きという建前がある以上、歩いて向かうことにする。

View of Pormenaz
荒涼とした景観をゆく

 少し歩くと分岐に到達し、ここから本格的な登りに入る。最初のうちはマシだったが、次第にジグザグの急登になり、喘ぎながら登る羽目となった(それでも後続は引き離していく)。

  ここをこなすとブレヴァンのコル(Col du Brévent)に到達。この先は岩峰の裏側に周り込んで斜面をトラバースしていくので、いったんモンブラン山群の展望が途絶えてしまう。おまけに、ガレ場にはまだ残雪もあって、危険な箇所が続く。時に梯子や手すりを使いながら斜面を登っていくと、ようやく分岐点が現れ、頭上にはブレヴァンの展望台が見えてきた。

  ここまで来れば一安心。後は雪の残る道を注意しながら登れば良いが、それではつまらないのでちょっと寄り道。いったん左に入ってモン・ブランとロープウェイを眺めるポイントに向かう。が、いまだにアルプスの女王は雲の中にあり、見てくれはイマイチだ。しばらく待ったが変化はないので、おとなしく展望台に向かうことにした。

 展望台に登りつめると、さすがに多くの人たちで賑わっている。先ほどの日本人女性も、他の中高年の人たちと何やら話をしている模様だ。楽しそうに話しているので、私はお邪魔をしないよう、周囲の景観を眺めて過ごしてみる。

  すると、彼女は私に気づいたらしく、近づいて話しかけてきた。当たり障りのない会話でやり過ごしていると、今度は一緒に話をしていた中年男性も近づいてきた。こちらの方、初めての個人での海外旅行で、数日前にジュネーブ(Genève)で強盗に遭って貴重品一式を盗まれたらしい。さすがにかなり気落ちしていて、こちらにも伝染してしまいそうなほどだ。TMBも歩きたかったらしいが、もうそんな気分ではないとのこと。それでも、どういう経緯か知らないが、これから2人でプランプラまで軽くハイキングするという。梯子などあるので十分注意して下さい、とだけアドバイスして別れた。

Mont Blanc from Brévent
ブレヴァンからのモン・ブラン

Aiguille Rouges from Brévent
赤い針峰群を望む

 奇遇が重なり

 彼らが去った後しばらくして、私もここを立ち去るとする。確かに展望は良いのだが、かなり賑々しいし、モン・ブランも綺麗に見えていなかったので、これ以上の長居は無用と判断したのだ。

 展望台からは分岐を左に入り、眼下にブレヴァン湖(Lac du Brévent)を見下ろしながら下っていく。結構急な斜面だが、道がジグザグに整備されているので、意外に歩きやすい。ここをグングン下っていくと、前方に見覚えのある人影が…さらに近づいていくと…間違いない、先ほどの2人だ。どうやら道を間違えてしまったらしいが、もうかなり下っているので、これから引き返すのは困難。ならば一緒に下ろうということになり、奇遇が重なって、この先は3人で歩くことになった。

 ブレヴァン湖への道を右に見送り、尾根を周り込むと、再びモンブラン山群が登場。ここからはしばらく、平坦で見晴らしの良い道が続く。やがてベル・ラシャ小屋(Refuge de Bel Lachat)が見えてくるが、この辺りはまさに絶景で、谷底にシャモニの街並み、その奥にはモン・ブランやシャモニ針峰群、ドリュが迫って見えている。ボソン氷河ももう目の前だ。小屋は結構混んでいたので、ここから少し下った草地に腰を下ろし、持参の品で昼食を取ることにした。

View of Aiguilles de Chamonix
シャモニの谷と針峰群の絶景

View of Mont Blanc and Aiguilles
モン・ブランは雲の中…

 女王は相変わらず雲の中だったが、申し分のない景観だ。空を見上げれば、多くのパラグライダーが気持ち良さそうに遊んでいる。別天地とはこのことで、いつまで眺めていても飽きることはない。まさか3人で歩くとは思っていなかったが、たまにはこういうのも良いものだ。

 随分長居したところで重い腰を上げ、シャモニに向けての下りに取りかかる。ここからはTMBの本コースと分かれ、標高差1000mあまり、目もくらむような急斜面を下る。幸い道はつづら折に良く整備されているので、急がなければ問題はなさそうだ。ただ、これが登りだったら辛くて仕方ないだろう。現に、登ってくる人は本当に辛そうである。

  適当に話をしながら歩みを進めていくと、次第にモンブラン山群は高さを増し、やがて樹林帯に入って姿をくらましてしまった。後は淡々と下ると市街地に出て、ほどなくしてシャモニに到着。振り返ればブレヴァンの展望台が頭上にあり、あそこから下ってきたのかと思うと感動も一潮。個人的には、皆無事にシャモニに帰着できて一安心であった。

Looking up at Aiguilles de Chamonix
下るにつれ針峰群が高くなる

 意外な急展開

 シャモニに着いたら、3人で軽くティー・タイム。中年の男性改め大杉さんがおごって下さった(盗難に遭っているというのに、ずいぶん気前の良い人だ)。いまだTMBに未練があるようで、還暦祝いで歩こうと思っていたが、日本語しか話せないし、パートナーもいないので、今回は諦めると言う。私は明日から歩き始めるが、今からでは宿の確保が難しいと思い、とりあえず手配方法について話をして、今後の機会に役立ててもらう。それからは、私は明日からの縦走のための準備、他の人は土産あさりなどに出向くため解散。つかの間のグループ旅行は幕を閉じた。

 その後、メール・チェックを済ませ、買い出しを終えたら、最終バスで宿へ戻る。すると途中のバス停で2人が現れ、大杉さんが大声で「明日からツール・デュ・モンブランを歩くことになったのでヨロシク~!」と言ってきた。どういうこと???

  訳のわからないまま別れると、乗ってきた女性が事の顛末を説明してくれた。あの後、観光案内所に言って事情を話したところ、それは行かなきゃもったいない!ということになり、急遽宿の手配をしてくれたのだという(私が手配をお願いした宿を、ちゃんと覚えていたらしい)。

 それにしても、あまりに急な展開だ。こちらがどんなコースを歩くかも知らず、人となりもろくにわからないまま、いきなり明日出発で歩くなんて…悪い人ではなさそうなので、杞憂に終われば良いのだが、歩くペースも違うだろうし、言葉も話せないとなればこちらがカバーするしかない。いったいどうなってしまうのだろう…思いがけず、期待と不安が交錯する展開になってしまった。

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