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旅行記:アルプス(世界自然旅)

52.日本人知らずの展望地 (2004/7/10:曇時々晴

 秘密の展望台?

 今日こそマッターホルン展望のために、早出してゴルナーグラート(Gornergrat)に出かけようと思っていたが、いざ起きてみると、晴天にもかかわらず、マッターホルンだけは雲に身を潜ませていた。まったく、なんて気まぐれな山だ…

 朝食を終えたら街に出て様子を伺うが、この時間帯こそ日本人観光客の天下で、ここは日本かと見紛うほどの混雑ぶり。当然ゴルナーグラート行の列車も大混雑で、とても出かける気にならない。相変わらずマッターホルンは雲隠れしていることだし、ここは予定を変更して、他の山々を眺めるコースを歩くことにした。

 ツェルマットでは、最低でも2つのコースを歩こうと思っていた。1つはゴルナーグラートからスネガまで、マッターホルンを眺めながら歩く定番コースで、これはマッターホルンが見えていないと話にならない。そしてもう1つが、これから歩こうとするヘーバルメン(Höhbalmen)のコースである。

 ここは、なぜか日本のガイドブックでは紹介されていないが、マッターホルンの北側の台地上を歩く展望コースだ。ロンプラには"Höhbalmen provide one of the finest natural lookout points in Switzerland"と記載されていたので、ぜひ歩いてみたいと思っていた。ここからはマッターホルンをはじめ、モンテ・ローザ(Monte Rosa:4634m)、リスカム(Liskam:4527m)、ドムなどの4000m峰が数多く眺められるとのことで、欧米人には人気の展望地らしい。日本人の多さに辟易していたし、この天候でも十分に楽しめそうなので、この展望台を訪れることに決したのだ。

 とはいえ、ここは台地上にあるので、きつい登りをこなさなければならない。コース紹介ではツェルマットから直接登るようになっていたが、少しでも楽をしたいと思い、ひとまずフーリ(Furi)経由でシュヴァルツゼー(Schwarzsee)までテレキャビンで昇り、そこから歩き始めることにした。

 雲の切れ間

 郊外のテレキャビン乗り場まで歩いていくと、結構な混雑に驚かされる。と言うのも、ここはクライン・マッターホルン(Klein Matterhorn)に向かうルートの起点でもあるので、この展望台に向かう観光客や、夏スキーを楽しむ人たちでごった返していたのだ。しかし、フーリでシュヴァルツゼー行に乗り換えると一転、急に人が少なく静かになった。

 上昇するにつれてモンテ・ローザとリスカムの迫力ある姿が見えるようになったが、あいにく雲が邪魔するようになり、やがて霧に吸い込まれていった。シュヴァルツゼーは完全に雲の中で、周囲は何も見えない…下から見た時は問題なかったので、ちょうど運悪く雲が上がってきてしまったようだ。

 ここからの展望は良いはずなので、このまま歩き始めるのは惜しい…ということで、しばらく待機し、雲が流れるのを待つことにする。この問題児はなかなか退いてくれなかったが、30分ほど待っていると、次第に上昇する雲は少なくなり、やがて視界が開けるようになった。この頃には訪れる人も増えてしまったが、ひとまずモンテ・ローザとリスカムの姿を見られて一安心。そして、いざ歩き始めた(本当は頭上に聳えるマッターホルンも見たいところだったが…)。

Monte Rosa and Liskamm
モンテ・ローザとリスカムを望む

Looking down at Zermatt
ツェルマット方面の景色

  坂を下るとまもなく、山上の湖・シュヴァルツゼーが見えてくるが、あまり大したことはないので通過し、幅広の道を緩やかに下っていく。左手のマッターホルン北壁はまだ雲の中だが、正面には次第にツムットタール(Zmuttal)奥の氷河や岩山の姿が見えるようになってきた。広々とした草原、スタッフェルアルプ(Stafelalp)に出ると、何人もの人がのんびり休んでいるが、ここは淡々と下り、分岐点に着いたところで左折。前方に見える滝へ歩いていった。

 貯水池を過ぎると、滝の上に向かってジグザグに登り始める。ここを越えるといったん楽になるが、まもなく分岐となり、右に入るといよいよヘーバルメンに向けた急登になった。ジグザグにちゃんと道が付けられているのできつくはないが、驚いたのはハイカーの数。もちろん日本人は見かけないけれど、多くの欧米人が逆方向から下りてくるではないか。やはり結構有名なコースなのだ。

 氷河を眺めながらひとしきり登ると、急に台地上に出て平坦な道のりとなった。下からは窺い知れなかった世界である。見渡せばヴァリス山群の高峰が広がり、マッターホルン北壁も雲間に姿を見せている。これが快晴だったらどれだけ気持ちが良いだろう、と思わずにはいられない。その後、道は至極緩やかに続き、次第に北へ方角を変えていく。もうラッシュ時間帯を過ぎたので行き交う人の姿もなく、快適な道のりだ。やがてヘーバルメンの分岐に到着したので、ここでしばし辺りの景色を見渡したのであった。

View of Zmuttal
ツムットタール奥の眺望

North face of Matterhorn
マッターホルン北壁が迫る

View from Höhbalmen
モンテ・ローザ方面の展望

Sheep at Höhbalmen
ぬいぐるみみたいな羊

 アクロバティック!

 そして、時は4時半過ぎ。これ以上遅くなると帰りに支障をきたすので、泣く泣く歩き始めることにする。放牧された羊(ぬいぐるみみたい)をよけ、台地上の道を歩いていくと、次第に下りになり、尾根を周り込んだところでトリフト(Trift)の谷が見えてきた。ここはツェルマットの奥座敷とも言われるところ。街からすぐ近くなのに、そこからは想像もつかない別天地が広がっている。オーバー・ガーベルホルン(Ober Gabelhorn:4063m)にチナールロートホルン(Zinalrothorn:4221m)、そして氷河が実に美しい。

View of Trift
トリフトの景観

 ここを下っていくと、不意に動物の姿が見えた。シュタインボック(Steinbock)だ。これまで、見たくてもなかなか見られなかったのだが、こんなところで見られるなんて…喜びを抑えつつ静かに近寄っていくと、さすがにこちらの気配に気づき、警戒している。驚かさないように振舞ったが、そんなことはわかるはずもなく、まもなく逃げられてしまった。それでも間近でその姿を拝見できたのだから、十分に満足であった(おそらく、人気もないような時間帯に歩いていたのが良かったのだろう)。

Steinbock
シュタインボック (たぶん子供)

 それから淡々と谷底に向けて歩いていくと、しばらくして、今度はシュタインボックの群れが現れた。彼らはこちらに気づいていないらしく、谷底に向けて急坂を下っていく。それも妙にはしゃいで、中には回転しながら駆け下っていく物もいる。なんてアクロバティックな動きだろう。きっとじゃれているのだろうが、実に面白い動きだ。

  彼らは水場まで下りると栄養補給に夢中になり、こちらの様子など見向きもしない。ちょうどコース沿いだったのでそっと近づいていくと、かなり迫ったところで気配を察知し、こちらを警戒し始めた。が、彼らがいるのはまさにこの先のコース上。退いてもらわないと通れないので、仕方なくお邪魔して通過させてもらった。

Group of Steinbock
シュタインボックの群れ

 トリフトに着いたら、後は対岸の山々を眺めながら、川沿いに急下降していく。この辺りは結構急な斜面だが、驚いたことに、こんな時間になっても多くのハイカーが登ってきている(皆辛そうだが)。エーデルワイスヒュッテ(Edelweisshütte)まで下ると眼下にツェルマットの街が見え、ここから樹林帯の中をジグザグに下降。やがて街並みの端くれに下って、無事帰還したのであった。

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