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旅行記:アルプス(世界自然旅)

44.荒々しいスイス (2004/6/28:曇時々晴

 国立公園への道

 スイス国立公園へは、ポントレジーナ8時発の列車に飛び乗り、のどかなオーバー・エンガティン(Engiadin Ota)地方を北上していく。ただ、朝のうちは晴れていたものの、国立公園の近くまで来ると、すっかり雲が多くなってきてしまった。

 "Walking in the Alps"に載っているハイキングコースは2つ。1つは2000年8月に国立公園に指定されたばかりのマクン(Macun)を歩くコースである。ここは国立公園としては「飛び地」になるが、湖沼群の眺めが抜群とのこと('magical lakeland landscape'と書いてある)。非常に興味をそそられるが、標高3000m近いところまで登るので、この時期では雪で歩けるのか、少々不安だ。

 もう1つはクルオッツァ谷(Val Cluozza)を縦走するコースで、国立公園制定時からのエリアを歩くことになる。こちらはマクンほど景観は良くないようだが、最高点で2545mなので、この時期でも十分歩くことができる。

 本を読む限り、面白そうなのはマクンの方だが、かなりリスクも高いので、天気が抜群ならマクン、そうでなければクルオッツァ谷を歩くことにしていた。そして、この天気を見る限り後者の方が良さそうなので、今回はクルオッツァ谷に向かうこととし、ツェルネッツで下車してバスに乗り換えた。

 小学生の団体が乗ってきたためバスは結構混雑していたが、シュペル谷(Val dal Spöl)を横目に進むようになると深い渓谷が見えてきて、子供たちが歓声をあげている。この辺りはスイスとは思えない荒々しい景観が続き、倒木や枯れ木なども散見する。渓谷を縫うように走り、コースの入口となるヴァルン・チャフオル(Vallun Chafuol)で降りるが、ここで降りたのは私だけ、泊まっている車も1台だけと、何とも寂しい風情であった(おそらくほとんどの人は、この先にある世界遺産の聖ヨハネ・バプティスト修道院を訪れるのだろう)。

Spöl River
シュペル川

 スイスの原野

 さっそく歩き始めると、最初は樹林帯の中を楽々下っていき、シュペル川を渡る。ここは氷河などないのに水色で、美しい流れになっている。この先を少し登り、分岐にやってきたところで国立公園の標識が現れた。見ると、地図の案内とともに、公園内での決まりが書かれている。ハイキングのコースを外れてはいけないとか、動物に餌をやらない、高山植物を採らない、キャンプや焚き火は禁止、などなど。面白いのは「おしゃべり禁止」。こんなところまで来る人が大騒ぎするとは思えないが、個人的にはありがたいことだ。

 ここからは、しばらくつづら折の登りが続く。森の中とはいえ、陽が差して結構暑いので、意外に体力を消耗する。登るにつれて周囲の展望が開け、眼下にはシュペル川が湖のように広がり、向かいの山々も良く見えてくるが、当然展望台など設けていないので、木々が邪魔してなかなか綺麗には見えない…この先、きっと良い場所があるはずだ!と信じて登っていくと、森林限界が近づいたところで展望が広がり、樹林越しに見ていた景色が一望のもととなった。ここは良い眺めなので、休憩も兼ねてしばらくのんびりとくつろいだ。

Val dal Spöl
シュペル谷を見下ろす

 険しい岩稜を見ながらさらに高度を上げると、ようやく急登は終了し、しばらく緩やかな台地上を歩くようになる。この辺りでも谷に向けて切れ落ちていて、かなりの迫力だ。いかにもスイスらしくない、荒々しい原野の中を歩いていくと、残雪が現れ、そこを登ったところでムルテル(Murter)の峠に到達。ここでクルオッツァ谷や、その奥の山々が視界に入ってきた。想像していたよりも良い眺望だ。峠から少し下ったぐらいが景色が開けて良いので、そこで昼食を取ってくつろいだ。

View from Murter
ムルテルより

Val Cluozza
クルオッツァ谷

 峠からは谷底まで、ジグザグの道を延々下っていく。この辺りも険しい景観が続き、途中では荒涼とした岩場も見られる。コースはここを縫うように作られているが、自然保護が優先されているためか、スイスにしては道の整備が行き届いておらず、結構危なっかしい箇所がいくつもある。ここをクリアして森が近づくと、急斜面で道も斜めのままなので、気をつけながら歩を進めていった。

Rocks at Cluozza
荒々しい景観が続く

 ようやく谷底が近づいてくると、その手前で分岐が現れ、すぐにクルオッツァ小屋(Chammana Cluozza)に到着した。ここには国立公園に関する展示物があるので、休憩がてら見学させてもらう(ドイツ語なので意味はよくわからない…)。その後谷底に向かうと、この辺りからすれ違う人が多くなり、ほどなくして川を渡って対岸を登り返していった。

 急峻な渓谷

 再び登りが続くが、今度はそれほど急ではなく、道の整備も行き届いているので、比較的楽に登ることができる。進むにつれて、右手のクルオッツァの渓谷が牙をむき始め、急峻な姿になっていく。これほど険しい谷になっているとは想像していなかったが、そこを巻きながら歩いていった。

Looking back at Cluozza
谷の上流を振り返り見る

 しばらくするといよいよ雲が増えて、空一面を覆うようになってしまった。これでは景色を楽しむ気になれないので淡々と歩き、やや急な道を登っていく。すると、不意に平坦になり、まもなく下り始めた。どうやら尾根まで出て、これからツェルネッツに向けて下っていくらしい。クルオッツァの谷と山々に別れを告げて、森の下り道に突入するのだった。

 ここからの下りも結構急で、道は歩きやすいものの、登っている人は本当に辛そうだ。やがて国立公園の境界にさしかかり、後は街に向かってクネクネと高度を落としていく。気がつけば車の騒音が聞こえるようになり、次第に車道も近づいて見えてくる。そして、お花畑の中を通り抜けていくと車道に到達。後はお気楽に街まで歩いた。

 街に着いたところで、次の列車までまだ時間があったので、通り道にあったツーリスト・オフィスに寄ってみる。ここには国立公園に関する歴史や動植物に関する展示などがあるが、残念ながらドイツ語とフランス語のみで、詳しい意味はわからない…それでもさらっと中の様子を拝見し、国立公園の概要に触れることができたのに満足して、ツェルネッツを後にした。

 列車はなぜか20分あまり遅れ、途中のサメダン(Samedan)で乗り換える羽目になったが、夕方前には無事ポントレジーナに帰着。そして最後の晩餐を食し、ベルニナを去る準備を進めた。

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