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旅行記:アルプス(世界自然旅)

40.雪深きドロミテ (2004/6/22:曇時々晴

 見えたり隠れたり

 翌朝、小屋は雲海の上に浮いていた。周りは見渡す限りの岩峰群と、何とも贅沢な一時だ(外はかなり冷え込んでいたので、野宿をしたら大変なことになっていたかも…)。朝食の時間になると雲が徐々に上がり始め、山々の景観は乱れ始めたが、まだドライ・チンネの東壁は綺麗に見えている。それを逃すまいと、すぐさまチェックアウトしてラヴァレード峠へ。峠に着く頃には雲がかかり出してきたものの、まだ何とか見えている。この時間、下界からは誰も来ておらず、静かな一時とともにこの絶景を堪能することができた。

East side of Drei Zinnen
ドラン・チンネ東壁

Drei Zinnen again
再びのドライ・チンネ

View from Forcella Lavaredo
ラヴァレード峠からの眺め

 ここから雪道を下っていくが、夜の間に道が凍ってしまい、結構怖い。恐る恐る進んでいくものの、除雪されたためにかえって危険だ(雪かきした後、それが不十分で凍結した状態に似ている)。どうにかツルツルの下り道を抜けると平坦になり、前方にショベルカーが見えてきた。朝早くからご苦労様。ちょっと道を開けてもらい、雪の上に上がると、後は踏み跡に従って前進(この辺も少々危ないトラバースだが、もう雪道歩きは慣れたのか、難なくクリア)。そして9時過ぎにはロカッテリ小屋に到達し、無事ドライ・チンネを一周することができた。

 この頃にはもうドライ・チンネは雲の中だったが、待てば晴れるかも、と思ってしばらく小屋の前で待機すると、20分ほどしてにわかに雲が上がり、巨大な岩壁が姿を現した。これは何度見ても良い景色だ。

  しばらくするとまた隠れ、その後また見えたりと気ぜわしいが、これが自然というもの、ゆっくりと行方を見守ってみる。すると、何やら奇声が聞こえ、まもなく自転車に乗った8人組がやってきて騒ぎ出した。これが人工の産物、嬉しいのはわかるが、あまりにもひどい…それが気に入らないのか、岩壁たちも姿をくらませたので、私もこの場を去ることにした。

 ここも深雪の道

 ここからはセストに向けて、昨日とは違った道を歩いていく(ちょうど周回するような形になる)。が、昨日見た限り、この先は雪道のトラバースが続くため、本当に歩けるのか不安だ。

 とりあえずコースの入口に行ってみると、いちおう踏み跡があるので、それに従って歩いていく。早くも深雪で苦労するが、踏み跡がいくつかあるのが幸い、踏み固められた跡をたどって進むことができる。左手には小さな湖があり、その先にはサッソ・ヴェッキオ谷が見える。昨日はここを登ってきたのだが、良く目を凝らすと、早くも登ってきている人が見える。雲行きは怪しくなっているが、彼はドライ・チンネを見られるのだろうか。

 いったん岩の露出した盆地に出ると、踏み跡が不明瞭になってきた。見失わないよう注意しながら歩くと、無事本道に合流。そしてまもなく、深雪のトラバースが始まった。先人たちの功績のおかげで楽に歩けるが、一歩間違えば転落死しかねないので、慎重に歩を進めていった。

 斜面の中間に来たところで雪が途絶え、しばし楽々の土歩きとなる(これが普通なのだが)。再び雪道になるところで小休止すると、見下ろせば湖がすぐそこにあり、独特の美しい色合いをしている。ここから岩峰群を眺める景観もなかなかのものだ。

Val Sasso Vecchio
サッソ・ヴェッキオ谷を見下ろす

 十分休んだところで歩行開始し、また雲が増え始めて嫌な予感がする中、雪の斜面を着々と歩いていく。ここを無事通過すると、今度は峠に向けての登り。もう滑落する心配はなくなったが、今度は体力勝負だ。時々休みながら、着実に高度を上げていった。

 登り始めから峠は見えているが、やはりそう楽なものではなく、息を切らせながら直登していく。峠が近づくと踏み跡もジグザグになり、部分的にはとても深い。ドロミテでこんなに深い雪と戯れることになるとは、夢にも思っていなかった(だいぶ後で聞いた話だが、今年は何十年ぶりという大雪だったそうだ)。

 辛抱強く登って峠に到達すると、ここからは反対側の岩峰群の視界が一気に開ける。道はこの先ほぼ稜線歩きになるが、相変わらず雪が多いので、所々迂回しながら歩いていくと、ほどなくしてピアン・ディ・センジア小屋(Rifugio Pian di Cengia)が見えてきた。ここもまだ営業しておらず、静寂そのもの。雪登りで結構体力を消耗したので、昼食がてら休憩することにした。

View from Pian di Cengia
ピアン・ディ・センジア小屋付近より

Croda del Toni
クローダ・デル・トニ

 予報が当たらない

 食事を終えたところで、反対側から登ってきたグループが現れた。彼らは雪道にかなり苦戦しながら小屋に着いたようで、安堵感からか騒ぎ始めた。居心地が悪くなったのでまもなく退散し、先を急ぐことにした。

  すると、先に進むにつれ、反対方向から登ってきた人たちと何度もすれ違うようになった。彼らは雪道で不安らしく、ほとんどの人が「道は正しいか」「道はどこだ」と聞いてくる。しかし、それよりも心配なのは天候だ。思いのほか崩れ始めてきたので、私はもう道半ば以上来ているので大丈夫としても、これから登ろうとする人は問題ないのか、ちょっと疑問であった。

 しばらくすると本格的な下りになり、それに伴って残雪も徐々に少なくなる。もうここまでくれば少々の雪では驚きもせず、淡々と進んでいく。右手には霧に包まれ始めたクローダ・デル・トニ(Croda del Toni:3094m)が聳え、何とも異様な雰囲気だ。

  するとまもなく、眼下にコミチ小屋(Rifugio Comici)が見えてきたが、ここで雨が降り出してきた。予報では、今日はまずまずの天気だったはずだが…ともかく難を逃れるため、小屋まで駆け下りて雨宿りした。

 雨はすぐ止むかと思いきや、むしろどんどん強まり、とても歩けないほど激しくなってしまった。雷も鳴ってかなり危険な状態なので、ここは我慢で雨宿りを続ける。だが、1時間経っても降りやまず、なかには諦めて下り始める人も現れた(ここまで来て引き返す人は意外に多い)。まだ最終バスまで時間があるとはいえ、このまま降り続いたらまずい…だんだんと不安が募ってきた。

 雨は、結局2時間ほど降り続いて小康状態になり、ようやく歩けるレベルにまで落ち着いた。これはチャンス!とばかりに歩き始めると、雨はまたすぐに降り始めてしまった。早まったか…と一瞬悔やんだが、これはすぐに止み、気がつけば青空が覗き始めている。まったくもって本当に変わりやすい天気だが、またいつ降り出すとも限らないので、とにかく先を急いで下っていく。

 ここまで来ると雪はだいぶなくなったが、まだ所々で残っている(気をつけて歩けば問題ないが)。順調にクリアしていくと徐々に花咲く林になり、眼前にはフィスカリーナ谷が良く見えるようになってきた。もうゴールは近い。

  淡々と下っていくと、1時間ほどで元の分岐に帰着。後はのんびりと小屋まで歩き、そこからは車道とは別のルートでバス停に戻っていく。終点間際になってまた雨が降り始めたが、強くなったのは幸いにもバス停に着いた後だったので、雨宿りでしのぐことができた。

Wildflower in Dolomites (1)Wildflower in Dolomites (2)
Wildflower in Dolomites (3)
ドロミテで見た花々

 こうしてバスでキャンプ場まで戻ると、ちゃんとテントは残っていて、荒らされた跡もなかった(ここはイタリアだが)。天気が悪いながらも無事帰ることができ、岩峰群も堪能することができたので、まずまず納得のいく展開であった。

 そして翌日、予報では一日雨だったが、蓋を開けてみると晴れている…何だか損した気分だが、ともあれキャンプ場を後にし、サン・カンディドから西に進路を取ってボルツァーノ(Bolzano/Bozen)を目指した。

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