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イタリアの国旗

旅行記:アルプス(世界自然旅)

39.迫力の岩峰 (2004/6/21:曇時々晴時々雨

 ここはイタリア?

 オーストリア-イタリア国境のブレンネロ(Brennero/Brenner)に着くと、列車は時間になっても動かない…が、30分遅れでようやく発車し、いきなりイタリアらしい展開となった。そして、フォルテッツァ(Fortezza/Franzensfeste)で乗り換えるが、乗り継ぎ列車に乗り遅れたと思ったらちゃんと待っていてくれて、さらに遅れての発車。それでも終点のサン・カンディド(San Candido/Innichen)にはほぼ定刻通りの到着となった(さすがイタリア?)。

 それにしても、この辺りは街の名前が2つあって紛らわしい。と言うのも、この南チロル地方は第1次世界大戦までオーストリア領だったため、イタリア語名とドイツ語名が併記されているのだ。話している言葉も、イタリア語よりドイツ語の方が多いぐらい。ここは本当にイタリアかと思ってしまうほどである。

 サン・カンディドからはバスに乗り換え、ひとまずセスト(Sesto/Sexten)を目指す。この頃になると降り続いた雨はおさまり、わずかだが岩峰群も見えてきた。なかなかの迫力で、この先が楽しみになってくる。

  セストの街を過ぎ、坂を上がったところで下車。今日は宿の予約をしていないので、飛び込みでCaravan Park Sextenに向かい交渉すると、テント・スペースにはまだ空きがあるとのことで、ここで3泊、キャンプをすることにした(車無しでキャンプしている人は他に見当たらないが)。

 ここは5つ星のキャンプ場だけあって、マッサージ室やレストランはもちろん、トイレやシャワーに至るまで超豪華で、とてもキャンプ場とは思えない充実ぶりだ。周りには何もないので、今夜はここのレストランで夕食を食べる(ヨーロッパに来て初めてのレストラン!)と、メニューはドイツ語とイタリア語のみ、周囲の会話はイタリア語よりドイツ語の方が主流である。味の方はというと、さすがイタリア、パスタを頼んでみたが美味しい。値段もノルウェーやフィンランドのサンドイッチ(コンビニで売っているもの)より安いぐらいで、大満足であった。

 天候安定せず

 翌21日、今日はまずまずの天気予報だったのに、起きてみると完全に霧に覆われ、何も見えず…昨夜降った雨でテントはビショビショなうえ、朝になっても小雨がぱらついているので、出かける気になれない。本当に回復に向かっているのか、しばらく見定める必要があった。

 いつでも出かけられるよう買い物を済ませ、外の様子を見ていると、9時過ぎになってようやく青空が覗き始め、岩峰も見られるようになってきた。これなら何とかなりそうなので、10時前のバスに乗ってモソ(Moso/Moos)で降り、30分ほどの連絡でフィスカリーナ谷(Val Fiscalina)に向かうバスに乗り換えて、数分で終点に到着(歩いたら1時間ぐらいだろうか)。目の前には迫力のチーマ・ウナ(Cima Una:2699m)が立ちはだかり、ドロミテに来たな、という感慨が生まれてきた。

Cima Una from Val Fiscalina
チーマ・ウナを望む

 さて、ここから目指すのは、かの有名なトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード/ドライ・チンネ(Tre Cime di Lavaredo/Drei Zinnen)である。これはチーマ・ピッコラ(Cima Piccola:2792m)、チーマ・グランデ(Cima Grande:2999m)、チーマ・オヴェスト(Cima Ovest:2973m)の3つの岩峰の総称で、500mも垂直にそそり立つ姿で知られている。

  普通、ここへは一大リゾート、コルティナ・ダンペッツォ(Cortina d'Ampezzo)やミズリーナ(Misurina)からアクセスするが、こちら側は大変混み合うとのこと。一方で、逆側になるフィスカリーナ谷からのアプローチは(日本のガイドブックでは紹介されていないが)岩峰群を眺めるのにとても良いということなので("one of the most impressive approaches to Tre Cime di Lavaredo"と書いてある)、こちらを採用したわけである。

 道はまず、フォンド・ヴァーリ小屋(Rifugio Fondo Valle)に向けて、平坦で幅広な道をゆく。あまりにお気楽過ぎて、20分ほどで小屋に到達。そのまま休まず歩くと登りになり、10分弱で分岐が現れた。ここを右に進み、サッソ・ヴェッキオ谷(Val Sasso Vecchio)に沿って登っていくが、この先は結構な急登だ。

 先行く人たちをどんどん抜かしていくが、調子に乗って飛ばし過ぎたため、かなり汗ばんできた。辛いところだが、振り返ればチーマ・ウンディチ(Cima Undici:3092m)をはじめとした岩峰が望め、左手には迫力のクロード・フィスカリーネ(Crode Fiscaline:2616m)が間近に見える。チロルより暖かいのか、花の種類は豊富で、ツツジも咲き始めている。それらを愛でながら歩くが、この頃から雲がまた増え、山には霧がかかり始めた。そして雨…やはり天候は安定しないようである。

Cima Undici
チーマ・ウンディチ

Crode Fiscaline
クロード・フィスカリーネ

Azalea
ツツジが咲く

 雨対策を施して登りをこなすが、頭上に見える滝が近そうで遠く、意外に時間がかかる。降ったり止んだりを繰り返す中、構うことなく歩いていくと、滝の上に出たところで若干展望が開けてきた。目指すロカッテリ小屋(Rifugio Locatelli)はまだ見えないが、そう遠くはないようだ。そして、さらに登ると雪が目立ち始めたが、まもなく前方に小屋が見えてきた。その奥には、聳え立つドライ・チンネの姿もある。頭は雲に隠れているが、想像以上に大きく、大迫力だ。

 こうして、2時間あまり歩いた末にロカッテリ小屋に到着。小屋はまだオープンしていない(準備中)が、ちょうど昼時とあって、テラスには多数のハイカーの姿があった。ここは正面にドライ・チンネを望むところだけに、休憩には絶好の場所。私もどうにか居場所を確保して、しばらく様子を見守った。

 雨は相変わらず降ったり止んだりで、時に強く降ることもあった。これではドライ・チンネにかかる雲が取れないのは当然だが、驚いたことに、この周囲はまだかなりの雪に覆われている。ドロミテというと、アルプスの中では暖かい地域。氷河もほとんどなく、写真で見たドライ・チンネには雪などほとんどなかった。が、今は裾野が完全に雪で覆われ、トレイルもほぼ雪だらけ…人気コースだけにショベルカーが出動し、除雪をしているほどである。6月下旬にもなってこれほど残雪があるとは、正直驚きだ。

Laston Scarperi
ラストン・スカルペリ

Monte Paterno
ペターノ山

 秘策成功!

 しばらく小屋で佇んでいると、多少晴れ間が覗き、周囲のラストン・スカルペリ(Laston Scarperi:2957m)やペターノ山(Monte Paterno:2744m)は見えてきた。しかし、肝心のドライ・チンネは一向に姿を見せてくれない。時間が経つにつれ人は徐々に減り、気がつけばもう3時、ほとんど人がいなくなってしまった。

  何としてもドライ・チンネの雄姿を見たいので、今日は寝袋持参で歩いてきたが、この小屋に泊まることはできない(人がいなければビバークするつもりだったが、従業員がいるので、下手なことはできない)。ならばと、ひとまずドライ・チンネを周回するコースを歩くことにした。

 小雨の中、ロカッテリ小屋から雪道を下っていく。分岐に差しかかると、なんと、不意に天気が良くなって、ドライ・チンネが顔を覗かせているではないか。そこで、すぐさま撮影タイムに突入するが、それもつかの間、すぐに隠れてしまい、また雨が降り出してきた。徐々に良くなってはいるようだが、青空と雨雲が交互にやってくるので、油断のできない状態が続く。

 道はいったん中途の谷に下りていくが、この辺りは完全に雪に覆われて道が不明瞭で、踏み跡をたどっていったら崖に出てしまった。仕方ないのでここを慎重に下り、別の道に合流。下り終えたら、広々とした台地上を歩いて本来の道に戻り(この辺は道が錯綜しているので、それを逆に利用)、やがて緩やかな登りに入った。

  ここは右手に広がるリンボン谷(Valle di Rinbon)が一望でき、なかなか気持ちの良い道だ(雪は結構残っているけれど)。ランゲ小屋(Lange Alm)まで来ると、左手のドライ・チンネ北壁が見上げる高さになり、覆いかぶさってくるようだ。この大迫力を堪能しながら、一息でフォルチェリーナ峠(Col Forcellina)まで登った。

Tre Cima di Lavaredo from Locatelli
迫力のドライ・チンネ

Valle di Rimbon
リンボン谷と岩峰群

Looking up at Tre Cime di Lavaredo
迫るドライ・チンネ北壁

 この峠から次のメッゾ峠(Forcella Col di Mezzo)までは、緩やかなトラバース道になる。幸い雪は踏み固められているので、気をつけながら通過。そしてメッゾ峠を越えると、南側の展望が開けて、険しい岩峰群が見えてきた。

  しかし、ここに来て再び雨が降り出し、すぐに雹に変わってしまった。これはたまらないので、急ぎ足でオーロンゾ小屋(Rifugio Auronzo)に向かい雨宿り。ここは通常のコースの起点だけあって、小屋はとても立派だし、広大な駐車場も備えられている(もう遅いので、台数は少なかったが)。ここに泊まるという手もあったが、混んでいそうなので敬遠し、雨が止んだら先に進むことにした。

 30分ほどで歩行再開し、右手のマルゾン谷(Valle Marzon)と岩峰を見ながら平坦な道を歩いていく。そして、20分もするとラヴァレード小屋(Rifugio Lavaredo)に到着。泊まるとしたらここか野宿だが、小屋は暗くて怪しい雰囲気だ…が、まもなく大雨になってしまったので、勇気を出して小屋に突入! 中にいた従業員に聞いてみると、宿泊は可能という。良かった…これで一安心で、荷物を置いてしばらく休んだ。

View from Col di Mezzo
メッゾ峠付近より

Valle Marzon
マルゾン谷

 夕食の時間になって階下に下りていくと、外は急速に回復し、ドライ・チンネにかかる雲もほとんど消えたようであった。実は、ドライ・チンネが最も美しく見えるのは夕方。もし天気が回復したら、この小屋からなら、ちょっと歩けば北壁を望むことができる。それに期待して宿泊したのだが、見事にこの秘策が的中したようだ。そこで食事を終えたら急ぎ支度を整え、他の4名が食事中の中、駆け足でラヴァレード峠(Forcella Lavaredo)を目指した。

View from Rifugio Lavaredo
ラヴァレード小屋からの眺望

View of Monte Paterno
ペターノ山はこんな感じ

 除雪された雪道を上がっていくと、眩しいほどの太陽が正面に見えてくる。そして峠まで登ると、そこには夕陽を浴びた勇壮なドライ・チンネが鎮座していた。素晴らしい…この景色を見ているのが、私とロカッテリ小屋の従業員だけかと思うと、感動もひとしおだ。

  ただ、峠からでは少々角度がきついので、ここからさらに雪の回廊を下ってゆく。こんなところでも3mぐらいの雪が積もっていて驚きだが、見晴らしの良いところからはドライ・チンネが本当に美しい。この光景をしばらく目に焼き付けた…と言いたいところだが、しばらくすると太陽が雲に隠れてしまい、夕焼けまではもってくれなかった。

  それでも、期待通り晴れてドライ・チンネが見られて良かった、と安堵しながら小屋に戻ったら、9時前なのにもう、他の宿泊客は寝入っているではないか。ドライ・チンネを見ずに寝てしまうなんて、もったいない!

Drei Zinnen
夕方のドライ・チンネ

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