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旅行記:アルプス(世界自然旅)

38.不意打ちばかり (2004/6/19:曇時々晴後雨

 徹夜ウォークの結末

 とりあえず目の前に駅があったので、ここのベンチに腰かけ、夜食を食べて今後の方策を練る。もう夜で危険なので、ここで宿を探したり野宿しても良かったが、やはりホーエ・ムートには行っておきたいので、これから徹夜でイェンバッハまで歩き、そこで早朝の列車をつかまえるのが良かろう、と決断して動くことにした。

 とはいえ、どこをどう行ったら良いかわからない…目の前の道は自動車専用道なので歩けず、かと言って歩行者はどこを歩いて良いのやら。ひとまず線路の上を歩いてみるが、ただでさえ歩きにくいうえ、こんなところを警官に見つかったら、それこそ一大事だ。少し先で脇道を発見したので歩いてみると、随分道からそれて、その後また本道に戻っていった。なんだ…と思ったら、目の前の道路にはちゃんと歩道が延びており、その先は延々と続いているようだ。

 これに従って歩いていくと、まもなく本道から外れるものの、歩行者用道路はずっと続いている。照明が少ないので道がわかりにくいが、薄明かりを頼りにひたすら前進していく。いくつかの集落を抜けるとツィラータールが終わり、イェンバッハらしき街明かりも見えてきた。既に1時になっていたが一時休憩。バス停で1時間ほど時間調整し、再び暗闇の中を歩いていった。

 ここまで来ればもう余裕、と思っていたのだが、ここからイェンバッハまでの道がわかりにくく、気がつけばイェンバッハを横に見る丘の上に来てしまっていた。慌てて取って返し、途中の集落から川沿いの道を進むが、川を渡りたくても渡れず、いつの間にかイェンバッハを通り過ぎてしまった。その先で渡れたので戻るようにして進み、イェンバッハに着いたのは3時半過ぎ。次の列車は4時半(始発)なのでしばし休憩。眠気と寒さと闘いながら過ごし、無事列車に乗ることができた。

 転寝しつつ、1時間後にはエッツタール駅に到着。でもこんな時間にバスはないので、しばらくは駅構内で待機し、7時のバスでオーバーグルグル(Obergurgl)に向かった。車内は通学途中の小中学生でうるさかったが、終点には8時半着。さすがにこの時間では人も少なく閑散としており、これなら静かに楽しめそうだ。

 若干の買い物を済ませたら、さっそくホーエ・ムート行のリフト乗り場に向かう。夜明け前から雲が広がり、だいぶ空を覆ってきたので早く行きたい…が、肝心のリフトが動いていない。9時になれば動くかと待ってみるが、そんな気配はないまま時間だけが過ぎてゆく。心配になってインフォメーションに行ってみると、なんと、運行は1週間先からだという。ここは有名な観光地なので、てっきり動いていると思ったのだが…その頃にはもうスイスに入っているので、もはや諦めるしかない。再びリフト乗り場に行ってみると、試運転か、リフトは動いていたが、当然乗せてはくれない。無念だが、もうここを去るしかなかった。

Obergurgl
無念のオーバーグルグル

 バスは運良くインスブルック行だったので、安心して車内で仮眠し、気がつけば昼過ぎに街に戻っていた。天候が思いのほか崩れていなかったので、その足で裏山になるノルトケッテ(Nordkette)に登ろうかと思ったが、山頂まで昇るロープウェイは明日からとのこと…またも不意打ちを食らってしまったが、それなら明日にした方が良いので今日は断念。反対側の山に上がり、有名なツィルベンヴェーグ(Zirbenweg)を歩くという手もあったが、この時間からでは帰りのロープウェイが終わってしまうので、止めた方が良い、ということで、後はカフェで時間を潰してから宿に戻り、瞬く間に眠りについた。

 お気楽のはずが

 そして翌日、満を持してノルトケッテに向かう。幸い天気は良好で、目指す岩稜は良く見えている。土曜日なのに始発の便は閑散としており、数名の乗客とともに、まずはケーブルカーでフンガーブルグ(Hungerburg)へ。ここからロープウェイに乗ってゼーグルーベ(Seegrube)で乗り換え、ハーフェレカール(Hafelekar)山頂駅に上り詰める。眼下にはインスブルックの街並みが見え、その先にはアルプスの山々を望むことができる。微妙に雲がかかってきて綺麗には見渡せないが、十分に想像はできる眺めだ。

West view from Nordkette
インスブルックとアルプスを望む

Karwendelgebirge
カルベンデル山群

 まずはここから、目と鼻の先のハーフェレカールシュピッツェ(Hafelekarspitze:2334m)に登ってみる。登り始めるとさっそく、左手にカルベンデル山群(Karwendelgebirge)の険しい山容が見えてきた。そして、山頂には10分弱で到達。360°の展望が広がり、人もまだほとんどいないので快適だ。

  しばらくはこの景色を眺めるが、眼下のインスブルックを見通したいのに、途中にかかった雲が退いてくれない…ちゃんと雲海になってくれれば良いのだが、これでは中途半端。そのうち晴れると期待して、混み合う前にこの地を離れることにした。

view from Hafelekarspitze
ハーフェレカールシュピッツェ山頂より

 ここからは稜線近くの道をたどり、東に歩いてゆく。と言っても岩を削って作られた平坦なルートなので楽々…のはずが、まだ雪が結構残っていて、所々苦戦を強いられる。わずかな踏み跡を頼りに歩いていくが、小雪渓のトラバースが何度もあり、谷側は切れ落ちているので慎重に足を運ばざるを得ない。眼下の展望は素晴らしいのだが、相変わらず雲が邪魔して視界が開けぬまま歩く羽目になった。

 グライルシュピッツェ(Gleirschspitze:2317m)の脇を通り過ぎ、稜線を越えると下りにかかるが、右手にマンドルシュピッツェ(Mandlspitze:2360m)が近いので、ここを登ることにする。山頂への直登は結構きついが、振り返ればノルトケッテの展望が素晴らしく、右手には鋭いルメルシュピッツェ(Rumerspitze:2454m)、そして眼下にはインスブルックの街並みと、豪華な布陣が顔を揃えている。最後はまだ誰も踏み入れていない雪渓を横切って、山頂着。ところが、展望はもう少し下の方が良かった(山頂付近はやや緩い)ので、少し休んだら展望の良い場所に戻り、ここでしばらく辺りを眺めた。

Nordkette ridge
ノルトケッテの稜線を振り返る

 雲は取れそうで取れなかったが、暖かくなったせいか徐々に上昇してきて、周囲は雲に隠されてしまった。すぐに晴れるだろうと待ってみるが、意外に晴れず、展望が一向に開けない…既に1時間近く待っていたが、これ以上時間を要するのも何なので、途中で晴れてくると信じて、ゆっくりと下山の途についた。

 普通、下れば雲が切れるのだが、意に反してなかなか景色は見えない。おかしいなぁ、と思いながら歩いていると、先ほどまで上昇していた雲が、急に下降を始めた。まずい…これは天気が崩れてくる兆候だ。今日の予報はまずまずだったが、これから崩れるのか、ちょっと不安になってきた。

  辺りは一面霧で何も見えないが、標識を頼りに、分岐からゼーグルーベに向かう道を採る。ここも雪渓が残る難所があったがクリアし、後は淡々と白い世界を下っていった。

  そして、不意に分岐が現れたところで霧が晴れて、インスブルックの街並みが突然視界に飛び込んできた。まだ雲が多いものの、ようやく展望が開けてほっと一安心。この景色をしばらく眺めたら、少し登ってゼーグルーベにたどり着いた。

View of Innsbruck
インスブルックの街並み

 ここからロープウェイで下っても良かったが、せっかくなので、反対側にある奇岩、フラウ・ヒット(Frau Hitt)やブランドヨッホシュピッツェ(Brandjochspitze:2559m)に近づいてみる。駅を通り過ぎ、緩やかに登っていくと、険しい岩山の姿が浮き彫りになった。

  だが、ここにきて天候はいよいよ怪しくなり、ついに雨が降り出してきた。しばし我慢して歩くが、雨脚は強まるばかりで、すぐに雷鳴とともに激しい雨になってしまった。隠れる場所などないので、風に背を向けて、ひたすら耐え続ける。こんなはずではなかったのに…

 最後まで…

 雷雨はしばらく続き、1時間半経ってようやく弱まってきた。一部では青空も覗き、どうにか助かったようなので歩行再開。谷筋まで歩いたところで、ヘッティンガー小屋(Höttingeralm)に向けて下り始める。山は完全に雲に隠れてしまったが、もうそんなことはどうでも良い、安全なうちに下ってしまおう。

  ところが、小屋が近くに見えてきたところで再び雨が降り出し、瞬く間に激しい雷雨となった。ひとまず雨宿りするも、既に5時過ぎ、早くしないと街に下りられなくなってしまう…雨は1時間以上降り続き、業を煮やして6時半過ぎ、多少弱まったところで強行突破。森の道をひたすら下り、ハンガーブルグには1時間あまりで到達した。

Innsbruck with clouds
雲間からインスブルック

 雨は相変わらず降っており、ケーブルカーは既に運行終了。インスブルックまではさらに歩いていくしかない…と思ったら、ちょうどタイミングよくバスが現れた。そうか、ここまではバスが走っていたのだ。こうして有難くも文明の利器を利用させていただき、十数分でインスブルックに降り立つことができた。

 もう8時になろうとしていたが、街では市民マラソンが行われていたらしく、この雨の中、いまだにゴールを目指すランナーが走っている。まずは腹ごしらえで駅前のカフェで食事を取り、ついでに最新の写真をバックアップしてホームページに載せられるよう編集。後はインタネットカフェに寄ってデータを更新する。ところが、ここで肝心のUSBメモリがいきなり故障。まだ2ヵ月しか使っていないのに、何ということだ! いろいろと試行錯誤してみたが駄目で、最後まで、本当に運から見放されっ放しだ(傷心のまま宿に戻ったのは、門限の23時直前であった)。

 そして、翌日は朝から大雨…今日はもうイタリアに向かうだけだが、最後までとことん運から見放されているようだ。9時半過ぎに駅に着くと、次の列車は11時過ぎということでしばし待機。外は風が強くて耐え難いので、構内の待合室で時を待つ(ここで野宿したと見られるバックパッカーがちらほら…)。列車は大雨の中、ほぼ定刻通りにやってくるが、結構混んでいて、座席を確保するのが大変だった。

 こうして最後は不意打ちばかりであったが、どうにか無事オーストリアを後にし、イタリア北西部のドロミテ(Dolomiten/Dolomiti)地方に足を伸ばすのであった。

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