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旅巧館旅行記オセアニアNZ Walking Journey 2001-2002
ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド (NZ Walking Journey)

10.自然の猛威 (2002/1/1:雨後晴

 ケアとの闘い

 強風に揺らされ、寒さに震えながら年を越したが、不思議なもので徐々に慣れてきて、多少は転寝できるぐらいになっていた。これで朝まで耐えられれば、死ぬ心配はしなくて済みそうだ。

  ところが、そこに思わぬ敵が現れた。なにやら聞いたことのある鳴き声で、すぐ近くでガサゴソ動く音がするが…なんとNZに棲むオウム、ケアだ。

  そこで、こちらもテントを叩いたり、声を上げたりして抵抗するが、あまり効果がなく、声は鳴きやまない。そして、ふと外を覗いてみると、ケアがストックを口にくわえて持ち去ろうとしているではないか(ただし体に比して大きな代物なので、そう簡単には運べない)。

  ここで慌てて外に飛び出し、近くにいたケアを追い払ったが、薄暗い中、なんと5~6羽のケアに取り囲まれていたのだ。被害をチェックすると、ストックが10mほど持ち去られていたほか、テントの金具も1つが数メートル持ち去られ、紐も1箇所引きちぎられている。新年早々の4時台(日本では新年を迎えたばかり)からとんでもない事態である。

  しかも、ケアは追い払ってもすぐに近づいてきて、テントを物色しようと試みる。まさか元旦からこんな闘いを繰り広げるとは思っていなかったが、何度も何度も撃退し、次第に遠くへ追い払うことで、ようやくこの受難から解放されたのであった。

 さて、雨は一時小康状態になったが、夜が明け、明るくなり始めた頃から雷鳴が轟き、激しい雨になってしまった。今日の日程は厳しく、早めに出ないといけないので、私は雷雨の間隙をぬってテントを収納し、雨の中、8時過ぎに最後のトレッキングを決行した。

 苦難の連続

 しばらくは昨日歩いた道を歩くが、やはり昨日と比べて滑りやすく、注意深く進まなければならない。沢を渡渉するとパイロンへの急登になるが、「あせらず着実に」をモットーに、少しずつ登っていく。すると思ったより早くパイロンに到達できたが、雷雨の中で峠にいるのは危険なので、さっそく下山。急勾配を慎重に、慎重を期して下っていく。

  ここから、足がすくむような区間を過ぎると少し楽になるが、それでも足場のほとんどない岩盤を下る箇所がいくつもあり、苦戦を強いられる。とにかく林の中に逃げ込みたいと思いながら、慎重かつ休まず下っていくと、パイロンから2時間近くかかって、ようやく森林限界に到達した。

 しかし、これで楽になるかと思いきや、今度は木の根と土が岩盤以上に滑りやすく、注意が必要である。しかもこの天候では、私以外歩いていないようで、誰もいない中で孤独な闘いを強いられた。

  やがて、大きな沢の渡渉に差しかかるが、この大雨で沢は氾濫し、どうにも渡渉できる状態ではない。そこで渡れるポイントを探すが、なかなか思うようにはいかない…唯一可能性があるのは、沢の中央まで倒れた木の幹を伝って、対岸にジャンプすることだ。目測で3mぐらい、普通なら飛べる距離だが、20kgほどの荷物を背負って飛べるかはわからない。濁流に飲み込まれたら最期だ。

  しかし、ここまで来たらやるしかない。決死の覚悟で飛ぶと、幸運にも対岸の石の間に足が入り込み、ジャンプに成功! これで勢いづき、ハイテンションのまま下り続けるが、これが予想以上に長く、徐々に焦りを覚えながら急ぎ足で下っていく。そして、森林限界から2時間あまりかかって、ようやくマツキツキ渓谷の谷底に到着した。

 決死の渡渉

 ここからバスの発着地まで2時間、バスの時間まであと2時間15分だったので、休むことなく牧場の中を進行。牛に注目されつつ、このペースなら間に合うだろうと考えながら歩いていくと、やがて大きな沢が道を遮断していた。本間さんは、マツキツキ渓谷に下れば渡渉はないと言っていたのに…

  仕方なく渡れるポイントを探すが、濁流で石の位置や深さすら把握できない。何度かポイントを探り、ついに決死の渡渉に挑戦すると、ストックでどうにか持ちこたえ、渡渉に成功した。勝利の雄叫びを吼えつつ先を急ぐと、またも渡渉だ。大雨で沢が氾濫しているとはいえ、もう勘弁してほしい…しかし、2度、3度と成功し、自信を深めていった。

 しばらく進むと、マツキツキに降りて4つ目の大きな渡渉が待ち構えていた。今度のはこれまでで最大規模で、容易に渡れるポイントが見つからない。それでも一か八かで挑戦してみると、水量に圧迫され、ついに押し流されてしまった!

  一度は体制を立て直そうとするも、荷物が邪魔して再び流される!! それでもどうにか必死に体を起こし、元の岸にたどり着いて九死に一生を得た(このまま流されていたら、数日後にワナカ湖に浮かんでいたかもしれない…)。

  やっとの思いで岸に上がると、しばらくは呆然と立ち尽くし、自然の猛威を感じずにはいられなかった。あまりの怖さに、もうここで諦めようとも思ったが、どうにも諦めきれず、とりあえず本流との合流部を探ってみる。が、深くてとても渡れない…もはや万事休すか?

  すると、ここで中年夫婦2人組がやって来て、何やら対策を練っていた。私が近寄ると「君は渡りたいのか?」と聞くので、「渡りたいがとても危険だ」と言う。彼は「それはわかっている。1時間半前にさらわれた人がいたそうだが、我々は渡らねばならない」と言うので、最後の賭けに出ることにした。

  そして、3人で丸太を抱え、一体になって渡渉を決行! すると途中で急に深くなり、3人とも倒れそうになった。ここで流されるわけにはいかない、と必死に持ちこたえ、最後は倒れこむようにして中州に到達。危機一髪だったが、ここまで来ればもう他愛ない。こうして最大の試練を乗り越えると、この後も2度3度と険しい渡渉が続いたが、同様にして成功し、どうにか命を繋ぐことができた。

Matukituki Valley
マツキツキ渓谷

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