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旅巧館旅行記オセアニアNZ Walking Journey 2001-2002
ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド (NZ Walking Journey)

9.苦難の果てに見えるもの (2001/12/31:曇時々晴後雨

 重装備の「サイド・トリップ」

  今日は大晦日だが、いよいよワナカ側のマツキツキ渓谷(Matukituki Valley)との境にあたるカスケード・サドルを目指す。ここはリーズ&ダート・トラックのサイド・トリップとして有名で、ほとんどの人は荷物を山小屋に置いて軽装で出かけるが、私はワナカ側に縦走するので、1人重装備で歩かざるを得ない。

  道はしばらくダート川(Dart River)に沿って続いており、出だしは快調だが、やはり荷物が重いと軽装には勝てず、徐々に遅れを取っていく。しかもこの日は曇りがちで、昨日見えていた氷河峰は雲に隠れたままで残念だ。

Cloudy Edward
エドワード山は雲の中…

 しかし、徐々に勾配がきつくなり、やがて厳しい登りに差しかかると、重装備の身には辛く、なかなか思うように足が進まなくなってきた。1人ゆっくりと、息を切らしつつ歩いていくと、サドルらしき地点も見えてくるが、全然近づいているような気がしない…休む回数も増えだし、何度も引き返そうかと弱気の虫が騒ぐ。ついには、昼までにサドルに着くという目標を断念し、ダート氷河(Dart Glacier)を望む途中で、やむなく軽食を取る始末であった。

  氷河を存分に眺めて、英気を養ったら、いよいよサドルへの最後の登りに差しかかる。この頃から、軽装の人たちが早くも引き返してきたが、構うことなく登っていくと、まもなくキャンプ指定地(らしき場所)に到達。ここで不要な荷物を置き、ようやく私も軽装に変身したところで、いざサドルを目指した。

Dart Glacier
ダート氷河

 地上の楽園

 一登りでサドルにやって来ると、マツキツキに落ち込む谷の絶景が広がり、この世のものとは思えぬ素晴らしい景色を見ることができる。あいにく、秀峰・アスパイアリング山は雲がかかって見られないが、マツキツキ側は晴天に恵まれ、綺麗な展望が広がっている。NZ5回目の本間さん曰く、今回のルートが最も迫力のある景観が見られるとのこと。おそらくNZ屈指の展望コースであろう。

Cascade Saddle
カスケード・サドルより

  と、ここで本間さんがダート・ハットに戻るのでお別れし、私は、明日が雨と聞いていたので、この先のパイロン(Pylon:マツキツキ側から登った最初の峠)まで行くことにした。この途中がまた、高山植物の広がる緩やかな散歩道で、沢のせせらぎを聞きながら山岳展望を楽しめるという、まるで地上の楽園のようなところである。ふと見ると、途中にはテントを張った女性2人組がいた(DOCでは、サドルの途中でキャンプしないように言っている)が、問題ないのだろうかと考えつつ、先を急いだ。

Cascade flower (1)Cascade flower (2)
Cascade flower (3)Cascade flower (4)
カスケード・サドル周辺に咲く花々

Mt Ansted and Mt Tyndall
奥にティンダル山

 アンステッド山(Mt Ansted:2388m)やティンダル山(Mt Tyndall:2496m)などを眺めながら歩き、カスケード・クリーク(Cascade Creek)を渡ると、今度は一転してパイロンに向けた急登が始まる。こことカスケード・サドルの登りを明日こなすのは辛いな、と思いながら登っていくと、やがてパイロンに達し、先ほどのカスケード・サドル以上にマツキツキ渓谷が迫ってきた。

Matukituki Valley from Pylon
マツキツキ渓谷の展望 (パイロンより)

  しかし、本当に素晴らしい展望地は、パイロンから少し下ったところにある。山と渓谷社の『ニュージーランド・ハイキング案内』149頁を見れば明らかだが、ここから5分ほど下った先に岩の突き出たポイントがあり、そこからマツキツキ渓谷を見下ろすことができるのだ。ここまで来たら、行かねばなるまい。

 最悪の年越し

  ところが、ここから谷に落ち込む勾配はあまりに急で、足がすくむほど怖い。ここを慎重に下ると、やがて左手に岩が現れるが、風もあり、岩の先へ進むのはさらに恐ろしい。一歩誤れば、もう奈落の底だ…本当に冷や汗もので、最後は這いつくばるようにして岩の先にたどり着いたが、それでも写真で見ていた絶景を肌で感じることができ、満足であった。

Aspiring view from Pylon
アスパイアリング山方面を望む

  そして、ここから引き返してキャンプ指定地に戻るが、気がつけば途中のテントの数が増える一方(5つぐらい)、先ほどいち早くテントを張っていた2人は、天候の不安を感じたのか、マツキツキ側に下っていった。私の場合、もう時間的にカスケード・サドル周辺にテントを張るしかないが、このままでは明日の負担が大きく、かつ「指定地」には誰もテントを張っていなかったので、サドルを越えたところにテントを張るため移動を決意した。

  この時点で雨が本格的に降り出したので、嫌な予感はしたが、安全そうな場所にテントを張っても、やがて風が強くなり、テントが大いに揺れて、とても生きた心地がしなくなってしまった。おまけに寒さも増し、徐々に体温を奪われていく。いちおう-10℃対応の寝袋を持っていたが、それでも寒いので厚着し、どうにか耐えるしかなかった。このまま、明日には屍になっているかもしれない…などと最悪のことを考えながら、寝付けるわけもなく、これまでの人生で最悪の年越しを迎えることになった。

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