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旅巧館旅行記オセアニアNZ Walking Journey 2000-2001
ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド (NZ Walking Journey)

10.破れかぶれの下山行 (2001/1/2:曇後晴

 別世界の稜線へ

  明日からは2泊3日のルートバーン・トラックを控えていたが、今日は空白日なので、コロミコ・トレックの日帰りツアーに参加することになっていた。前日の話では、天候が良ければマナポウリ周辺でスペシャル・ウォーク、悪ければ近場で、と聞いていた(個人的には、一度ゲートルード峠に行ってみたかったが、この時期はまだ残雪が多いので難しいらしい…)が、朝起きてみると、期待に反して薄雲がかかっていた。

  それでも食事を済ませ、集合時間の9時頃になると、雲もたいがい取れて、絶好の行楽日和になっていた。ところが、目的とするマナポウリ周辺には雲がまだ残っていたので、予定ではテ・アナウ湖畔から直接ヘリコプターで山上に昇ることになっていたが、急遽車でマナポウリまで移動し、そこで状況を見守ることになった。

 マナポウリはダウトフル・サウンドのツアー以来だったが、着いた頃には徐々に雲も取れ始めていたので、ツアーは決行されることになった。メンバーは私のほか、女性2人と男性1人、それにコロミコ・トレックの社長ともう1人、計6名だ。道すがら話したところ、女性2人はミルフォード・トラックを私より1日遅れで歩いたそうで、峠越えは晴れて景色が良かったという。しかも、悔やむ私に追い討ちをかけるように言うには、実は昨日ツチボタル・ツアーで同行していて、マフィンを食べているところを目撃していたという。まったく、油断も隙もあったものではない(ちなみにもう1人の男性は、この日テ・アナウに着いたばかり)。

  まもなくテ・アナウからヘリコプターが到着するが、定員の関係で2手に分かれ、私は1番手で出発することになった。上空に上がると、青く澄んだマナポウリ湖がひときわ美しい。下から見るとあまり大したことないように思っていたが、まるで違うもののような輝きだ。

  そして、今だ雲の取れぬ稜線の横を進むと、偶然にも1ヵ所、見事に雲が切れている箇所があった。さっそくそこから稜線に上がり、無事着陸(もし雲が切れていなかったら、引き返すか、事故を起こしていたかもしれない)。辺りは人の気配など全くなく、動物の気配すらなかった。地面にある天然の絨毯・シープスキンは何者かに踏まれたような跡もなく、エバーラスティング・デイジー(Everlasting Daisy)の花やエーデルワイス(Edelwaiss)のつぼみなどもあって、まるで別世界に来たような感じであった。

Everlasting Daisy
エバーラスティング・デイジー

Hunter Mountains
ハンター山脈より

 ここはどこ?

 同様にして後発隊も無事着陸し、思いのほか順調であったので、まずはゆっくりしようと、稜線でしばらく佇むことにした。周りはまだ雲に覆われているが、時折見える雲の切れ間から、辺りの山脈の様子を窺い知ることができる。地図によれば、この稜線はハンター山脈(Hunter Mountains)というらしいが、両側は崖になっており、一歩間違えれば大変なことになりかねないところである。

  ところで、今回は雲に遮られて奥の方まで来たので、スタッフにとっても初めての場所であるという。そこで、とりあえず稜線に沿って、湖方向に歩いてみることになった。大した高低差はないが、もともと道があるわけではないので、ところどころの危険な箇所に注意しつつ、稜線を進んでいく。ひどかった靴擦れも、ここ2日休んだおかげで回復し、特段問題なく歩くことができた。

  2つほど山を越えると森林限界が近づいてきたが、本当にこの稜線を進んでいって良いものか不安になってきたので、しばし休憩となった。辺りはほとんど霧に包まれていたが、食事をしていると、少しずつ雲が薄くなり、南側の斜面や、東側の湖が時折姿を見せるようになる。稜線から眺めるマナポウリ湖は摩周湖に似た濃い青色をしており、非常に美しい。しかし、見えたかと思うとすぐに雲が現れて、姿を隠してしまう…そんな「チラリズム」が何度となく続いた。

  すると突然、スタッフの人たちが「ここはまさか…」と言って地図を広げ、確認作業を始めた。どうしたのかと思ったら、実は今いる場所が、目的の展望台、マナポウリ・スカイライン・ルックアウト(Manapouri Skyline Lookout)であるという。これで一気に不安から解消され、時間的にも全く問題なくなったので、さらにこの展望台に滞在することとし、霧が晴れるのを待って、その度に美しい景色を堪能したのであった。

View of Lake Manapouri
マナポウリ湖 (スカイライン・ルックアウトより)

Moss wall
コケの群生

 再びの社長スペシャル

  ここまでは他愛のない「散歩」であったが、時間に余裕があることも手伝って、コロミコの社長が、稜線をそのまま下ってみようと言い出した。通常は、その奥の(今回のルートで言えば手前の)尾根筋に道があり、そこを下っていくそうだが、一度まっすぐ下ってみたかったという社長の一声で、またまた道なき道を歩くことになった。

  稜線を下り始めると、最初は獣道ができていて、なかなか快適な道が続いた。だが、しばらくすると急斜面が多くなり、極めてスリリングなルートになっていく。安全を考え、順番は社長、女性2人、私、中年の男性、最後にスタッフという並びであったので、ゆっくり歩けば問題なかったが、草木を掻き分け、落とし穴のような地層に注意し、時には行く手を遮る崖に直面して引き返すなど、まさに「アドベンチャー」といった趣きであった。

  急斜面では木を頼りたくなるが、この辺りは朽ち果てた樹木が多く、下手をするともろくも折れて滑り落ちてしまうので、特に気をつけなければならない(しかし、それを逆手に取れば、大木を倒すことも可能なので、力持ちになった気分でなぎ倒していけば、ストレスの発散になる)。よくぞ他の人たちも歩くものだと感心しながら下っていくが、下山しないと仕方ないので、他の人も破れかぶれだったのかもしれない。

  修羅場は延々と続き、近くて遠い湖面が恨めしくなってくる。しかし、こうしたところには正真正銘の手つかずの自然が残されており、まず誰も見ることのできない、美しい原生林やコケの群生などにも出合うことができた。

 結局、無茶な行軍で靴に草や土がたびたび入り、大いに苦戦しながらも、どうにか無事下山することができた。しかし湖岸に下りてもしばらくは崖続きなので、アップダウンを繰り返しながら、道なき道を懸命に進む。ようやく浜辺に出た頃には、もう午後6時を回っていた。

  眩しいぐらいの快晴で、湖越しのケプラー山脈(Kepler Mountains)が美しく映えているが、このまま歩いてマナポウリの街まで行くと、さらに2~3時間もかかってしまう。そのため、急遽モーターボートを呼ぶこととなり、無線で地元の人に連絡を取って、運良く来て貰えることになった。

Kepler Mountains
マナポウリ湖とケプラー山脈

  ビーチに出ると、天敵・サンドフライが襲撃してくるが、動き回ることで必死に我慢。そして、30分ほどで救世主が現れたので、皆急いでボートに乗り込み、湖岸を後にした。

  今回は行きにヘリコプター、帰りにモーターボートと、何とも贅沢なツアーであったが、それより何より、あの稜線の下山行はタフであった。よく皆リタイアもせず、無事に帰還したものだと思う。マナポウリに着いて、地元の人にどこをどう歩いたか(社長が)話すと、皆驚いて「よくやるな」と感心するほどであった。

 こうして、前回同様、今回も本命のトラックを歩く前に大きな試練を乗り越えたのであった。

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