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旅巧館旅行記オセアニアNZ Walking Journey 2000-2001
ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド (NZ Walking Journey)

8.最後の恥じらい (2000/12/31:曇時々雨後晴

 雲間のクルーズ

  昨日でミルフォード・トラックを歩き通したが、ガイド付ツアーの場合、ミルフォード・サウンドのクルーズもセットになっている。そこで、今日はまずミルフォード・サウンド観光に出かける。あいにく外は曇り空で、マイター・ピークも霧に隠れているが、それはそれで味があるというものだ。

Cloudy Milford Sound
霧のミルフォード・サウンド

 クルーズは朝9時に出航。幸いまだ観光客はほとんどおらず、静かで良かったが、正面の甲板に出ると風が非常に冷たく、ジャンパーを着込んでも肌寒い。そこでいったん中に入り、周囲の景色を眺めていると、不意に真横にイルカが現れた。一度しか姿を見せなかったのは残念だが、まるで我々を歓迎しているようであった。

  それからも、ニュージーランド屈指の景勝地を航行する。この辺りは深い入江になっていて、入江の両側の切り立った断崖が、フィヨルド特有の雄大な風景を演出している。特にマイター・ピークは、海面から直接切り立った山としては世界最高峰と言われ、ニュージーランド観光の代名詞のような景観である。

  クルーズは、いったんタスマン海まで出たら引き返し、スターリング滝(Stirling Falls)の水しぶきを味わえるほど急接近したり、岩で休んでいるアザラシを見たりして、無事帰還した。雲が取れなかったため、お世辞にも満足とは言えなかったが、晴れればさぞ綺麗なのだろうと思わずにはいられなかった。

Milford Sound Cruise
ミルフォード・サウンドの様子

Stirling Falls
スターリング滝

Fur Seal at Milford Sound
起きたアザラシ

 出でよマイター・ピーク

  桟橋に戻ると、既に観光客でごった返しており、思わず閉口してしまう。そして、これにてツアーはミルフォード・サウンドを後にし、テ・アナウやクィーンズタウンへ戻っていくが、私はさらに1日、ミルフォード・サウンドに滞在することにしていたので、ここでツアーの皆さんとはお別れ。後は晴れることを願いながら、20世紀最後の日を過ごすことになった。

  そこで、まずは荷物を預けておいたロッジに戻り、すぐ裏にある展望台に向かう。すると、この頃から徐々に晴れてきて(ツアー客に雨男か雨女がいたのか?)、青空が覗くようになってきた。展望台は、桟橋周辺の喧騒が嘘のように静かで、人もほとんど来ない。ふだんの東京での慌しい生活では考えられない、何に追われるでもなくゆったりと過ごす時間は、何物にも変え難い贅沢だと思いながら、晴れ上がるのを待って景色を眺めた。

View of Milford Sound
展望台からの眺め

  だが、晴れてはいるものの、どういうわけかマイター・ピークには雲がかかり、纏わりついて一向に剥がれない。西に雲がなくなっても、マイター・ピークにぶつかると雲が発生してしまうため、姿を拝むことすらできないのだ。たまに姿が見えてもすぐに隠れ、なかなかその全貌を露わにしてくれない…

  私は粘りに粘って、昼食を挟んで3時間ほど展望台にいた(ちなみに、その間に2人しか現れなかった)が、マイター・ピークは恥じらって姿を見せず、天気も悪くなってきたので断念。そして桟橋方面に下ると雨が降り出したので、いったんお店で雨宿りせざるを得なかった。 

 雨はしばらくして止んだものの、ミルフォード・サウンドは深い霧に包まれ、マイター・ピークは完全に姿を隠してしまった。仕方ないので、桟橋から歩けるボーエン滝(Bowen Falls)の遊歩道に向かい、160mの豪快な滝を間近で見物した。

  そこでふと振り返ると、不意に晴れてきて、マイター・ピークが姿を現し始めているではないか。私は慌てて桟橋に引き返し、撮影チャンスを伺った。何も20世紀の最後にこんなに恥ずかしがらないでも良いのに…と思いつつ、その姿が見られないものかと一心に願った。

  するとまもなく、本格的な晴れ間が広がり、雲が少しかかりながらも、ようやくその全貌が明らかになった。既に夕方の4時を回っており、半日、いや実際には丸一日かかって、ようやくその姿を拝むことができたのだ。

Mitre Peak
姿を見せたマイター・ピーク

Bowen Falls
ボーエン滝

 世紀越えのクルーズ

 こうして、どうにか所期の目的は達成したが、続いて世紀越えを迎えるため、早くから予約しておいたオーバーナイト・クルーズ(Overnight Cruisesの就航も近づいていた。乗船すると海賊に扮した乗務員が現れ、船内にはカウントダウン用の風船や飾りがあふれるなど、早くもお祭り気分だ。そして何より、絶好の天候が気分を盛り上げてくれた。

  クルーズも、天気が良いと暖かくて心地よく、景色も朝とは見違えるほど素晴らしい。マイター・ピークの美しさはさることながら、反対側のペンブローク氷河(Pembroke Glacier)やライオン岩(The Lion)・エレファント岩(The Elephant)、その両岩に挟まれたU字谷より流れ出るスターリング滝など、美しい見所が満載だ。

Milford panorama
マイター・ピークを中心とした眺望

The Lion and the Elephant
ライオン岩

Stirling Valley
スターリング滝のU字谷

  やがて船はアニタ湾(Anita Bay)を過ぎ、タスマン海に出る頃からは波も高くなったが、しばし北進したら引き返す。そしてデイル・ポイント(Dale Point)周辺で船を止めて、カヤックの時間になった。せっかくなので私も挑戦してみるが、晴天の中でカヤックを漕ぐのは気持ちの良いものだ。しかも大きな虹まで現れ、まるで20世紀最後の日を祝しているかのようであった。

Dale Point
デイル・ポイントの虹

  それから、船はシェアダウン連山(Sheerdown Range)を見ながら引き返し、ハリソン・コーブ(Harrison Cove)まで戻って、そこで停泊することになった。先に到着していた大型クルーザーの海賊と一戦交える場面もあり(ホースの水量の関係で負けてしまった)、なかなか面白かったが、やがて辺りは暗くなり、氷河を戴くペンプローク山(Mt Pembroke:2000m)に夕陽が当たって、いよいよ20世紀のフィナーレが近づいてきた。

Sheerdown Range
シェアダウン連山の眺め (ハリソン・コーブより)

Mt Pembroke
夕映えのペンブローク山

  この頃から、既に船内では歌えや踊れやの大盛況だったが、あまりのテンションの高さについていけず、私はいったん与えられたベッドに戻ってしまった。どうも昔から、こういうハレの場には慣れなくて、恥ずかしがって引っ込むたちだったが、20世紀の最後になって、大人と言われる歳になっても、この恥じらいを拭い去ることはできないのである。

  すると、しばらくして同じ部屋の中年男性が戻ってきて、寝支度を始めた。「もう寝てしまうんですか?」と尋ねると、「今日は綺麗な景色を見てもう疲れたし、明日も早く起きて景色を見たいしね。酒も飲み過ぎてしまったし…それに、あいつらの盛り上がり方は尋常じゃないよ」などと言っていた。私も、それもそうだなと納得し、ちょうど夜の11時を回ったところだったので、後40分ぐらいしたら戻ってカウントダウンに備えようと、しばらく横になった。

  そして…気がつくと、ちょうど12時を回ったところであった。どうやら転寝してしまい、カウントダウンの合図で起きたようだ。慌てて甲板に上がると、"Happy New Year!!"の声が飛び交っていて、盛り上がりは最高潮に達していた。ふと空を見上げると、辺りから光が差し込まないため、今にも零れ落ちそうなほどの満天の星空が、新世紀の到来を祝福していた。さぁ、新しい時代の始まりだ。

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