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旅巧館旅行記オセアニアNZ Walking Journey 2000-2001
ニュージーランドの国旗

旅行記:ニュージーランド (NZ Walking Journey)

6.試練の峠&滝越え (2000/12/29:雨時々曇

 峠への登り

  3日目は、ポンポローナ・ロッジからマッキンノン・パスを越えてクィンティン・ロッジ(Quintin Lodge)まで約15kmを歩く、このコースのハイライトである。そこで早朝、期待を抱いて窓を開けてみると、それを完全に裏切る雨が降っていた。しばらくすれば止むに違いないと信じていたが、朝食を済ませても、出発の準備が完了しても、雨はいっこうに弱まる気配はない…やむなく完全防備をして出発するが、それでも雨は降り続いていた。

 集団に巻き込まれるのを避けるため、例によって最初に飛ばし、先頭のガイドより先を歩くほどのペースで進む。そして、左手に滝が見えたところで小休止し、ビデオを撮ろうすると、結露してビデオカメラの撮影ができぬではないか。静止画のみ辛うじて撮影できるものの、あまりの寒さと湿気で、いかんともし難い…そう言えば昨夜、寝る前に同室のスチュアートが"damp"(湿っぽい)と言って嘆いていたが、普段湿度の高い日本に住んでいる身には、まるで実感がなかったのだ。しかし、冬のような寒さで雨が降れば、結露するのも当然。せっかくドライヤーがあったのに、何もしなかった自分を悔いた。

Waterfalls near Lake Mintaro
ミンタロ湖手前の名もなき滝

  歩き始めてしばらくは緩やかな登りであったが、やがて霧が濃くなり始め、景色を楽しむ状況ではなくなった(おまけに靴擦れもひどくなって、早く歩くのが困難になってしまった)。かつてマッキンノンが"Lake Beautiful"と呼んだミンタロ湖(Lake Mintaro)も、残念ながら霧で眺めは冴えない。道はやがてジグザグの急な上り坂へと変わっていき、後続も見当たらないため、ペースはさらにダウンしてしまった。

  天候はさらに悪化し、峠に向かって高度を上げるにつれ、雨はやがて雹に変わっていく。霧もどんどん濃くなり、振り返ると、これまで歩いてきたクリントン渓谷は霧に覆われていた。仕方なく、森の美しさだけを励みに登っていくが、最初のオーバーペースがたたって疲れ、岩陰で休憩せざるを得なくなった。

Green forest
ジグザグ道の原生林

  雨宿りをしながらエネルギーを補給していると、やがて健脚の日本人女性2人が追い抜いていくが、彼女たちもさすがに足取りが重いようだ。元気を取り戻し、先ほどの2人を追うようにジグザグ道を登ると、まもなく森林限界を越え、雹がまともに当たるようになる。しかし、ここまで来れば峠は近いと信じ、2人を抜いて順調に登っていった。

  そして、急に風が強くなり始めたと思ったら、目の前にマッキンノン・パスのモニュメントが現れ、無事峠にたどり着くことができた。ガイドが温かいココアをサービスしてくれるが、雹が降り、風が強く吹いているので、防寒対策をしていてもじっとしていられないほど寒い。ただ、霧の中から覗くサザン・アルプスの雪山と深いU字谷は、フィヨルドならではの豪快な景色である。

  しばし休んでいると、ガイドが峠の先に案内し、下のアーサー渓谷(Arthur Valley)を覗き込むよう指示していた。見ると、標高差800mほどの深い渓谷になっており、まともに真下を見るのが怖いほど。これでは、高所恐怖症でなくてもひるんでしまうだろう(ちなみに、調子に乗った私は、崖に突き出た岩に足を乗せて写真を撮ってもらった。ガイドも親指を上に突き出し、その勇気に賞賛を示してくれたが、撮影者のミスで写真は撮れていなかった…)。

Mackinnon Pass
マッキンノン・パスのモニュメント

View of Arthur Valley
アーサー渓谷の眺め

View of Clinton Valley
クリントン渓谷の眺め

 意外な急下降

  まもなく、休んでいるのが耐えがたいほど寒くなってきたので、モニュメントからパス・ハット(Pass Hut)まで数分の道のりを急いだ。この辺りは、本来なら雪を戴くサザン・アルプスの山々の展望と池塘が美しいところだが、相変わらず雹が降っており、歩くのも辛い。それでもコースの最高点を通過し、右手にクリントン渓谷の展望が見えてくると、眼下にパス・ハットが現れた。

  ここで昼食を取るが、冷えた体を癒すのには良いタイミングだ。外は風がますます強くなっており、外のトイレまで歩くのが困難なほどで、先へ進む気が失せてくる。だが、ハットもだんだんと混んできたので、そうも言っていられず、1時間ほど滞在したら出発した。

  外に出ると、まともに前を見られないほどの強風が吹いており、最初は苦戦したが、渓谷を下るに従って、風は徐々に弱まっていった。ここからは、エリオット山(Mt Elliot:2003m)とウィルマー山(Mt Wilmur:1714m)の麓を巻くように下っていくが、これが意外に急で、しかも結構長く続くので、油断していると膝がやられてしまいそうだ。

Mt Wilmur
ウィルマー山と氷河

Mt Hart
ハート山の眺め

  しかし、このあたりは景色が最も美しいところと言われるように、アーサー渓谷の向こうにはハート山(Mt Hart:1782m)が聳え、切り立った断崖を縫うように下ると、コケに覆われた森林と、急流ながら美しい小川と滝が道沿いに広がるなど、変化に富んでいる。特に滝は、これまでは少し距離を置いて豪快な流れを眺めていたが、ここでは間近で見られるようになっており、爆音を轟かせながら激流が下っている。

Forest with moss
コケに覆われた森

Big waterfalls
豪快な滝

Lots of waterfalls
滝が続く急流

  ところが、近いと思っていたクィンティン・ハットは意外にも遠く、まだか、まだかと下っていく。もういい加減にしてくれ…と思い始めたところで、突如標識が現れ、不意に宿に着いてしまった。最後はなんだか拍子抜けであったが、宿には労をねぎらうようにマフィンとジュースが置かれており、疲れた体を癒してくれる。だが、まもなく弱まっていた雨がまた本降りになったので、とりあえず部屋に避難し、カメラの復活や衣服の乾燥等を進めた。

 滝でずぶ濡れ

 しばらくして、同室のスチュアートがサザーランド滝(Sutherland Falls:580m)から帰ってきた。サザーランド滝はNZで1番、世界でも5番目の落差を誇る滝で、本日のオプションなのだが、さすがにすごい滝であったという。そこで私も出陣することとし、準備を進めた。そして、雨が小降りになったのを見計らって歩き始めた。

 途中の道は、コケの美しいところが続くが、このところの雨で水浸しになっている箇所もあり、せっかく乾かしかけた靴も台無しであった。水の道を歩くにつれ、徐々に滝の轟音が聞こえ始め、やがて眼前にその姿が見えるようになってくる。

 滝は3段に分かれているが、水量は雨で増加しており、近づくにつれ轟音がますます響き渡ってきた。滝の目の前まで来ると、水しぶきでまともに前が見られないほどだ。風圧ももの凄い。話によれば、この滝の裏側に周り込むことができるというので、無謀にも挑戦してみるが、水量が多いため手前の沢を渡るのですら危険で、なかなか進めない…

  ところが、私がてこずっている間に、ニュージーランド人の家族がやってきて、苦戦しながらも沢を渡っていくではないか。そこで私も負けじと渡り、彼らの後を追うように滝の側面に入っていった。当然ものすごい風と水量で、もはや雨具さえも何の役にも立たない状態だ(ちなみに、伊藤さんもほぼ同じ時間に挑戦していたものの、滝の近くで帽子が飛ばされ、眼鏡もずれてしまったので断念したという)が、必死の思いで歩を進めて、どうにか滝の裏側に周り込むことができた。

Sutherland Falls
サザーランド滝

  ずぶ濡れになりながら引き返すと、先ほど渡った家族の子供(おそらく10歳くらい)が"I've done, I've done!"(やった、やった!)と5分ぐらい大はしゃぎしていた。一方の私は、あまりの過酷さのため、放心状態になってしまった。道すがら、先ほどの家族の父親に"Well done!"(よくやった)と言われながら宿に戻り、ここでもスリッパのない悲哀を味わいながら、改めてシャワー&洗濯&乾燥等を行った。外は相変わらずの雨で、夕食を取っていても、雨は強まるばかりであった。

 食事の後、明日の行程のガイダンスを受けたら、後はフリータイムとなった。山小屋の日記帳を覗くと、当然英語が多いが、中には日本語で書かれたものもあり、数日前のパーティーでは運良く晴れて最高だった、などと書いてある。羨ましい限りだ(同行の人も、後1日歩いたら日本に帰るそうで、せめて1日ぐらい半袖で歩きたかった、とぼやいていた)。

  それから消灯までは、イギリス人夫妻と日本人全員で、お互いの国のことをどれだけ知っているか、クイズ形式でコミュニケーションを図った。時の日本国首相を向こうが知らなかったのは止むを得ないとしても、こういうところで、電化製品や自動車以外、思いのほか日本のことは知られていないのだと気づく。と同時に、こちらも意外に相手の国のことを知らないのだとわかる。英語も含めて、もっといろいろと勉強しなければ、と思わされるばかりであった。

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