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学士論文 『ポスト企業社会とボランティア』

はじめに

  中学、高校、大学、そして就職‥‥当たり前のことだが、大抵の人はこうした決められたレールの上を歩いている。そして、その中で、中学・高校・大学の受験戦争、モラトリアム明けの就職戦線、職場での出世競争と、熾烈な争いが展開され、勝者は人生の「成功者」として賞賛され、敗者は「落伍者」というレッテルを貼られてしまう。

  こうしたことは、多くの人が一度は疑問に思うことだろう。「成功者」の中には、金と権力の亡者と化して賄賂を受け取ったり、接待に打ち興じる人もいる。その一方で、「落伍者」の中には、非常に心根が優しく、人間としての温かみのある人もいる。これで明らかなように、人間の価値というのは、決して一元的に定められるものではないのだ。

  しかし、考えてみれば、これは自分の身にも振りかかってくる問題である。と言うのも、問題を深く突き詰めれば突き詰めるほど、こうした社会を生きている自分との葛藤に苦しめられることになるからだ。そのため、多くの人々は、この社会で生き抜くために、多少の疑問を抱いても、それに気づかぬふりをして現実の中に身を委ねていくのである。

  だが、それには納得がいかなかった。自分に嘘をついてまで生きていかなければならない社会など、どう考えてもおかしいだろう。「経済大国」と呼ばれ、世界有数の「豊かさ」を謳歌しているといっても、働き過ぎによる過労死、環境破壊の進行、家庭内離婚の顕在化といった矛盾が示しているように、所詮は上辺だけのことであり、その中身は非常に貧しいものなのだ。そして、こうした問題意識から、「何とかこの社会を望ましいものにしたい」、そんな思いが強くなっていったのであった。

  ところが、これまでの社会科学者の研究には、そんな「思い」に応えるようなものはあまりなかった。例えば、現代社会の矛盾を鋭くえぐるものはあっても、そこから未来社会の展望は見い出せなかった。また、あるべきビジョンが記されていたとしても、そこにたどり着く道程については、ほとんど記述されていなかった。これでは、下手な宗教とたいして変わりないだろう。もっと具体的で、かつ説得力のあるビジョンが必要だったのだ。

  そうした中、社会の成熟化や国際化、高齢化、情報化といった内外諸情勢の変化に伴い、これまでの日本社会を規定していた「企業社会」が制度疲労をきたし、日本的雇用慣行制度が見直しを迫られるようになっていた。また、その一方で、モノの充足と不況による自由時間の増大から個人生活の見直しが進み、より人間らしく生きたいという自己実現欲求が高まる中で、ボランティアが脚光を浴びるようになっていたのであった。

  そこで、この問題に注目し、その動向を追いかけていったのであるが、そのうちに、これまでの日本社会における「会社主義」や「『お上』意識」が様々な矛盾を生み出している中で、この閉塞状況を打ち破るオルターナティブとして、ボランティアがもたらす関係性や社会問題への取り組み方などが重要な役割を果たすのではないか、との考えに達した。そして、それを検討するために書かれたのが、本書『ポスト企業社会とボランティア』なのである。

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