なぜRealVideoか?

 これまで何の断りもなく「RealVideo」を前提に話を進めてきましたが、これにはちゃんとした理由があります。それが今回の話の中心です。

●ビデオファイルの代表格

 まず、コンピュータ上で使われるビデオファイル形式をおさらいしておきましょう。一般的に良く使われるものとしては、以下の3種類が代表と言えます。

  • AVI (Video for Windows)
    Windowsでの標準的な動画ファイル形式です。Windowsユーザーが大半を占めていることもあって、一番基本的な形式となっているようです。
  • QuickTime
    Macintoshでの標準的な動画ファイル形式です。Macユーザーが古くから使っていただけあって、今でもネット上の動画配信に使われています。
  • MPEG
    動画圧縮の標準的な規格です。ビデオCDで用いられているフォーマット「MPEG 1」のほか、DVDやCS放送に採用されている「MPEG 2」、次世代携帯電話等で使われる「MPEG 4」などがあります(以下ではMPEG1を前提としておきます)。

 ただ、ネット上での動画配信を考えた場合、これらの形式には致命的な欠点が2つあります
 1つは、これらの規格が基本的にCDやハードディスクからの利用を想定しているため、比較的高画質である反面、
ファイルのサイズが大きくなってしまうことです。例えば無圧縮のAVIファイルの場合、1秒間で3MB以上、1分間では200MB程度になります。ところがネット経由では、通信速度が64kbps(ISDN)で8kB/秒(0.48MB/分)、56kbps(最近のモデム)で7.1kB/秒(0.43MB/分)、33.6kbps(一昔前のモデム)で4.2kB/秒(0.25MB/分)、28.8kbps(二昔前のモデム)で3.6kB/秒(0.22MB/分)です。このため、例え1MBのファイルであっても、64kbpsで2分あまり、56kbpsで約2分半、33.6kbpsでは4分ほど、28.8kbpsにいたっては5分弱も待たなければならないのです(しかも、実際には途中の回線が混雑しているとさらに遅れます)。これでは、見る前に待ちくたびれてしまいます。
 もう1つは、
ファイルのダウンロードが完了しないと再生できないことです。これは数秒程度の短い映像なら問題になりませんが、長い場合は悲惨です。ただでさえファイルサイズが大きいので、ダウンロードに極めて時間がかかる上、再生が始まると待った割に早く終わってしまいます。これでは「3時間待ち、3分診療」の病院と同じようなもので、ストレスばかりがたまってしまいます(QuickTimeは、バージョン4で改善されましたが、詳しくは後述)

●RealVideoの特徴

 それに対して、RealNetworks社が提供するRealVideoは、ネット上での配信を前提としているので、上記の問題に対処できています。
 まず、ネット上でのデータの転送スピードにあわせて、
ファイルサイズを小さくしています。このため品質は落ちるのですが、無圧縮の時に比べて1/100〜1/200まで圧縮されるのです! MPEGによる圧縮が通常1/6程度、AVIの最圧縮でも1/50程度ですから、その違いがよくわかるでしょう。
 しかも、RealVideoでは、ビデオファイルをダウンロードしながら再生する
「ストリーミング再生」に対応しているのです。これは、ファイルサイズが小さくなったことで、ある程度までダウンロードした段階で再生しても映像が途切れることなく放送できる技術で、ダウンロードの待ち時間の問題が相当程度解消されることを意味します。そして、この機能をフル活用することで、リアルタイムに映像を届けるライブ中継も可能になったのです。最近になってスポーツ中継やコンサートの模様をリアルタイムで放送するページが増えていますが、それもこの技術により可能になったのです。
 加えて、これまではストリーミング放送をするためには専用サーバが必要でしたが、RealVideoは、Plug‐inさえインストールしてあれば、HTTPサーバ(ホームページを置いておくサーバ)上でも配信が可能なのです(ただしライブ中継には限界があり、貧弱なサーバーでは映像が途切れることもあります。またプロバイダによっては対応していない可能性があります)。つまり、普通のホームページのファイル(HTMLファイルやGIFファイルなど)と同じように扱えるということです。
 おまけに、
プレイヤーの普及が相当進んでおり、提供される番組も豊富です。RealNetworks社によれば、RealPlayerは既に1億人以上のユーザーによってダウンロードされており、インターネット上のストリーミングメディアに対応したホームページの85%以上がRealVideo(/Audio等)によるものだそうです。また映像を見るためのプレーヤーも、RealVideo形式に変換するエンコーダーも無償で提供されているので、作成に新たな投資を必要としません。これも魅力の一つと言えるでしょう。

●RealVideoのライバル

 ところで、RealVideoのほかにも、ストリーミングビデオを再生するシステムはあります。特に、最近のインターネットの拡大に伴い「インターネット放送」も増えているため、それに対応したシステムが増えています。そのうち、代表的な4種類を以下に紹介します。

  • Windows Media Technologies
    Microsoft社が、1999年になって本格的にストリーミングビデオ市場に登場してきました。後発のメリットを生かして、最新のMPEG4技術を圧縮の際に活用しています。
  • QuickTime 4
    Macintosh標準のQuickTimeも、1999年に登場したバージョン4からストリーミング対応となりました。パッケージ用からストリーミング用まで全てに対応しているのが特徴です。
  • VDOLive
    RealVideoとともに古くから利用されているのが、この「VDOLive」です。方式はRealVideoに似ていて、ライブ中継可能・HTTPサーバーからの配信も可能です。今後はMPEG4に対応予定とのことです。
  • Quality Motion
    KDDが開発している次世代のストリーミングビデオソフトです。これの魅力は最大1/500まで圧縮可能なところですが、逆にライブ中継は今のところ不可能で、ストリーミングにもまだまだ制限があります。しかもエンコーダーの購入にコストがかかります。

 これらのうち、最近特に注目されているのが「Windows Media Technologies」と「QuickTime 4」です。どちらもOS分野で有名な企業によるものなので、プレーヤーがOSとともに「付属」する等のメリットを生かし、RealVideoと熾烈な競争をしています。しかし、性能面ではどうなのでしょうか?

●較べてみよう

 そこで、実際に較べてみましょう。ここでは、北海道の秘湯「鹿見の湯」を例に、Windows Media Technologies (ASFファイル)、QuickTime、RealVideoを比較します。
 ちなみに、無圧縮時のAVIファイルは28,750kB、最圧縮時のMPEG1ファイルは2,094kBになります(放映49秒)。

ASF
28.8kbps用
(137kB)
64kbps用

 (279kB) 

QuickTime
28.8kbps用
(182kB)
64kbps用

 (399kB) 

RealVideo
28.8kbps用
(127kB)
64kbps用

 (280kB) 

ASFファイルをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
QuickTimeファイルをご覧になるには、QuickTime Playerが必要です。
RealVideoファイルをご覧になるには、RealPlayerが必要です。

 

 いかがでしょうか。私の家から試したところでは、クリックしてから映像が再生されるまで、いずれも28.8kbps用で20〜25秒程度、64kbps用では30秒程度でした(56kbpsモデム使用)。
 細かく見ると、ASFファイルの再生はやや早かったのですが、その分途中で映像が停止する機会が多かったです。QuickTimeファイルについては、サイズそのものが他の2種類に比べて大きく、音も映像もあまり良くありませんでした(Windows環境で作成したからかもしれませんが)。他方RealVideoはというと、再生までに若干遅れがありましたが、その分安定して見られる回数が多かったようです。
 このように、上記3種類のストリーミングファイルの再生については、一概にどれが良いとか悪いとか言えません。今後の切磋琢磨に期待したいところです。しかし、それでもなぜRealVideoを選んだのかと問われれば、それは単純に、最も一般に普及している形式だからです(先に記したように、ストリーミング配信の85%以上がRealVideoファミリーによるものなのです!)。それ以上の意味はありません。

(2000.5)


Back  Contents  Next